なぜ定期的に韓国に通ってしまうのか!? 韓国サウナ、聖水洞エリア、アート、肉といった4つのカテゴリーで、4人の賢者のお薦めをご紹介。その魅力を知れば、その沼にハマること間違いなし! 今回は、キュレーター・米原康正氏が「韓国アート」を紹介する。【特集 昂る、ソウル】
「ソウルは純粋にアートを愛する人が集う」
伝説のギャル・ファッション誌や写真投稿誌などを手がけ、東京発のガールズ・ストリート・カルチャーを牽引。その後、フォトグラファーやキュレーターとしても活躍し、ギャラリー運営にも携わる米原康正氏。そんな米原氏が、今最も勢いがあると推すのが、韓国のアートだ。
「一昨年くらいまで続いた世界のアートブームは、転売で利益を得るのが目的という人が、怒濤の如く参入。結果、価格が異常に上がりすぎてしまい、今では、転売価格が元の値段を下回るという現象が出てきてしまった。ブームが去り、世界中のアートシーンが冷えこんでいるなか、調子がいいのが韓国です」
米原氏がそれを実感したのが、2024年9月にソウルで開催された「韓国国際アートフェア」、通称、「キアフ・ソウル」。22の国と地域から206軒のギャラリーが出店していたが、うち130軒は韓国国内のギャラリーだったという。
「印象的だったのが、韓紙や墨のような韓国の伝統的な素材や、単色画といった技法を用いているアーティスト。特に、伝統を取り入れながら、現代的な感性を反映させた若手の作品が、新鮮で、面白かったですね。値段がわりと手頃だからか、現地の若いコレクターも大勢来ていて、関心を示していましたよ」
近年のアートブームを牽引してきたのは、バスキアやバンクシーが代表格のストリートアートや、村上隆に奈良美智に象徴されるネオ・ポップアートだ。しかし、韓国のアート業界は、そうした流行に追従することなく、独自の道を進む。「それが、韓国の勢いにつながっているのではないか」と、米原氏。
「若手アーティストたちが自国のオリジナルを尊重しつつ独自に進化させ、それを現地のギャラリーやコレクターも応援している。その感じが、すごくよかったですね。“高く売れそうなもの”ではなく、“自分が好きなもの”を選ぶという、アート本来のあり方に立ち返っている気がして」
その流れはギャラリーにおいても同様。特に聖水洞(ソンスドン)エリアには、「志の高いギャラリーが集まっています」とのこと。その筆頭が、ビル内にひっそりと佇む「スヒン・ギャラリー」で、伝統的手法を用いつつ、ポップな作品を生みだすHA HYESOOなど、若手アーティストの発掘に力を入れているという。アートを再考しに韓国を訪れたい。
この記事はGOETHE 2024年12月号「総力特集:昂る、ソウル」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら