空間もおもてなしもすべて1組のゲストだけのもの――。完全プライベートな空間で、誰にも邪魔されることなく過ごす美食の時。垂涎のグルメと優雅な滞在がかなう、とっておきのオーベルジュをご紹介。今回は石川・輪島の「茶寮 杣径(サリョウ ソマミチ)」。【特集 オーベルジュの誘惑】
能登の恵みをしみじみ感じる、塗師の世界観でもてなす宿
「茶寮 杣径」は、塗師(ぬし)の赤木明登氏が輪島を訪ねる客人のためにつくったゲストハウスだったという。設計は、数々の住宅建築を手がける中村好文氏。宿のインテリアは赤木氏の妻・智子さんが、使いやすく日々の生活になじむものをセレクトしている。「泊まる方が、暮らすように過ごしてくだされば」が、この宿の願い。
料理を担当するのは、「京懐石 吉泉」で修業後、金沢の割烹店や宿の「里山十帖」で料理長を務めた北崎裕氏。「天恵に最大の感謝と敬意を込めて、精一杯お客様をもてなしたい」と、能登でその時季、その日にしか手に入らない魚介や野菜を自ら山、海、川を歩き回って集め、およそ10皿の日本料理に仕立てる。
窓外に広がる自然と、部屋に飾られる調度やアートが、まるでひと連なりの風景になる。高級なものはないからこそ、心穏やかに過ごせる山中の寓居(ぐうきょ)なのだ。
この記事はGOETHE 2024年8月号「総力特集:オーベルジュの誘惑」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら