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2026.02.15

大谷翔平モデルの博多人形、超絶技巧の竹細工…プロが推薦する伝統工芸品9選

実用性があって芸術的。伝統工芸品こそ日本のハイブランドだ。そこで現代作家による品々をふたりの目利きが選んだ。新たな才能を見つけ、育てていく。それは成熟した大人だけが知る愉しみだ。今回は、伝統技術ディレクター・立川裕大氏のセレクトをご紹介。【特集 日本のハイブランド】

伝統技術ディレクターが注目する、伝統工芸品9選

『守破離』の思想が導く伝統工芸の継承と発展

日本各地の職人や作家、その技術の発掘に邁進する立川裕大氏が一貫して見つめ続けてきたテーマ、それは継承と発展だ。

「『型を守って型に就き、型を破って型を出て、型を離れて型を生む』これは僕が師と仰ぐ編集者の松岡正剛氏から教わった『守破離』の思想です。職人や作家たちの終わりなき探究は師のもとで技と古典を学ぶ『守』を経験し、時代を捉えながら、しだいに独自性を打ち出す『破』を経て、そして新しい型として確立する『離』へといたる。『守』だけでは時代に置き去りにされてしまいますが、『守破離』を連続することで伝統工芸は現代に生き生きと受け継がれます。そんな型破りな才能たちとの出会いは仕事冥利に尽きますね」

1.木象嵌(もくぞうがん)|平面作品の領域を超え生命が宿る立体造形へ

Niwa-雪解け-/福田亨

木材の色調や木目で色彩や模様を描く木象嵌。平面作品が主流だったこの技法を、福田亨氏は生物や植物を立体として写し取る「立体木象嵌」として切り開いた。「まるで生き物が呼吸しているかのような質感に身震い。先人が築いてきた技法を引き継ぎ、乗り越えようとする姿勢にも心打たれます」。

Niwa-雪解け-/福田亨
¥3,500,000[参考価格](福田亨公式ウェブサイト https://fukudatoru.com/t

2.竹細工|竹と向き合い軽やかさを編み続ける

Frill/中臣 一(なかとみはじめ)

細く割った竹を300種以上もの技法で編み上げる竹細工。中臣一氏の作品は、真鍮粉や金箔を塗り重ねるなど、異素材を取りこんだアプローチが特徴だ。Frillではスカートのひだのような軽やかさを表現した。

「繊細なのにダイナミック。竹の領域を超える超絶技巧に唸った」

Frill/中臣 一(なかとみはじめ)
価格は要問い合わせ(https://japan-gallery.jp/contact)©T.MINAMOTO

3.宗教彫刻|仏教彫刻の歴史と作家の研鑽が刻まれている

弥勒菩薩(みろくぼさつ)坐像/加藤巍山(ぎざん)

仏教彫刻と西洋彫刻を融合させた作品が国内外で高い評価を受ける加藤巍山氏。

「現代的な感覚を覚える仏像にはドキドキさせられる。この厳かな弥勒菩薩坐像には、力強さのなかにも優しさやどことない寂しさを感じるんです。いつかぜひ注文したいと企んでいます」

弥勒菩薩坐像/加藤巍山
¥8,000,000[参考価格](加藤巍山公式ウェブサイト https://gizan.tokyo)Photo Pedro M Shimura/Yumekoubou Gallery

4.博多人形|メジャーリーガーの魂を博多人形に吹きこんだ

黄金時代-生々流転-/中村弘峰

博多人形が持つ曲線美と胡粉(ごふん)で仕上げた素焼きの肌の柔らかな質感を生かしながらユーモラスな表現に挑戦する中村弘峰氏。2025年は大谷翔平モデルが誕生した。

「金太郎や歌舞伎役者など、その時代のヒーローが題材にされた博多人形。令和の大谷翔平と同様、彼もまた類いまれな才能と美意識で歴史を動かす存在だと思います」。

黄金時代-生々流転-/中村弘峰
価格は要問い合わせ(中村人形 TEL:092-751-9672)

5.おりん|明治時代から受け継がれた崇高な祈りの音色

おりん 7寸/シマタニ昇龍工房

明治時代から専業メーカーとしておりんを作り続けてきたシマタニ昇龍工房。金属板1枚1枚、時間をかけて鍛造することで、厳かな音を作り上げている。

「たまに坐禅を組むのですが、ここのおりんは音の深みが他とはまるで違い、うねるような音の余韻が心地いい。ひとつ叩くだけで静かな世界へと吸いこまれるんです」

おりん 7寸/シマタニ昇龍工房
¥264,000(シマタニ昇龍工房 TEL:0766-22-4727)

6.薩摩ボタン|手のひらに広がる花鳥風月の世界

雪輪乱菊(ゆきわらんぎく)/室田志保

絵付け師の室田志保氏によって、江戸時代に始まり一度途絶えた薩摩ボタンの歴史が再興された。

「なんと薩摩ボタンはすべて手描き。彼女の豊かな色彩感覚で描かれた日本の風景や百花繚乱の世界が、この小さな薩摩ボタンのなかに広がっている。世界各国にいるボタンコレクターたちから高い評価を受けているひとりです」

雪輪乱菊/室田志保
¥184,800(絵付ケ舎 薩摩志史 福重 TEL:0994-32-7209)

7.江戸切子|どこか詩的な表現に作家の人柄を垣間見る

光雨(こうう)/青山弥生

伝統工芸のなかでも特に知名度の高い、江戸切子のシーンに新星が誕生した。

「従来の直線的で鋭いカットとは異なり、青山さんの作品は水彩画のような柔らかく繊細な線が印象的で、ポエティックな世界を感じます。控えめな存在でありながら、江戸切子における新たな表現方法を確立したといえるでしょう」

光雨/青山弥生
¥55,000(青山硝子工芸 yayoiaoyama.glass@gmail.com)

8.漆工芸|伝統工芸を越境する漆界のニューウェーブ

gaze/宮城壮一郎

沖縄県や香川県、宮崎県と漆の産地を渡り歩き、漆の技法を身につけた宮城壮一郎氏は、工芸の枠にとどまらずアートの文脈にも挑戦している。

「彼をひと言で表すならアバンギャルド。オーセンティックな漆の技法を徹底的に学んでいるのに、絵画という表現に行き着いたのは必然だったのかもしれません」

gaze/宮城壮一郎
¥506,000(宮城壮一郎公式ウェブサイト http://3846.blogspot.jp

9.木彫刻|観察眼を研ぎ澄ませ超絶技巧のさらなる高みへ

竹の水仙/大竹亮峯

超絶技巧を極めるひとり、大竹亮峯氏の作品は、伝統工芸の意匠だけでなく花入に水を入れると蕾が開くというような工学的な仕かけも凝らされている。

「榧(かや)や楓の木、鹿の角などの多様な素材を用いて、植物の繊維の細やかさから野生味まで徹底的に表現している。もはや狂気の領域です」

竹の水仙/大竹亮峯
価格は要問い合わせ(大竹亮峯 公式ウェブサイト https://japanese-sculpture.com/ryoho-otake
立川裕大氏

Selected by 立川裕大
伝統技術ディレクター。1965年長崎県生まれ。オーダーメイドの伝統工芸プロジェクト「ubushina」と、日本の技の粋を集めたプロダクトブランド「AMUAMI」を主宰。卓越した職人たちの仕事を国内のみならず世界に届けている。

【特集 日本のハイブランド】

この記事はGOETHE 2026年3月号「総力特集:日本のハイブランド」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=山本菜美子

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