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2025.11.01

「メリットを4つ書き出す」と、目標達成や年収UPにつながる科学的理由

1万人以上のストレスに向き合ってきた脳科学者・西剛志氏が、「仕事のストレス」を断ち切る方法を伝授。最短1分、誰もが気軽に取り組める科学的メソッドに、きっと心が軽くなるはず。『脳科学でわかった 仕事のストレスをなくす本』(アスコム)から一部抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

ストレス↓&ドーパミン↑。目標達成や年収UPにつながる「メリット法」とは
Unsplush / Mathieu Stern ※画像はイメージ

仕事で結果を出す人は、“ドーパミンの使い方”がうまい

仕事でうまくいくエグゼクティブは、ストレスを感じにくいことがハーバード大学の研究でもわかっています。そして、ストレスを感じにくい人に共通していたこと、それはドーパミンが分泌されていたことでした。

よく気分が落ち込んでいるときにお笑い番組や楽しい動画を見ると気分が変わることがありますが、これは脳内からドーパミンが出て、ストレスが軽減されるからです。

やる気を左右するのは意思ではなく「期待値の設計」

ドーパミンを出してストレスをなくす方法は、仕事などをする際に、「それがもたらしてくれる具体的なメリット」を複数書き出すことでも実現できます。

ドーパミンは、脳が「この先に報酬がある」「これをやれば、きっといいことがある」といったように、未来に期待したときに分泌され、私たちの行動を促します。たとえば、わざわざチケットを買って映画館に行く時間をつくるのは、「この映画は楽しめるはずだ」という期待があるからです。同様に、「温泉で癒やされるだろう」「美味しいものが食べられるだろう」と期待するからこそ、私たちは旅行に行く気になるのです。

人が努力を続けられるかどうかは「期待値の設計」にかかっています。「それをやることによって何が得られるか」を具体的にイメージできたとき、ドーパミンが分泌され、内発的動機が自然に立ち上がり、行動することができるのです。

「メリットを4つ以上書き出す」と、脳が自動的に行動を促す

「資格を取ろう」「プロジェクトを成功させよう」「運動を続けよう」などと決意したとき、漠然と「頑張ろう」と思うだけではドーパミンが出ず、なかなか行動に移すことができません。そうすることで何が得られるかを、具体的にイメージできるようにする必要があります。

そこで非常に有効なのが、「それがもたらしてくれる具体的なメリットを複数書き出す」という方法です。大切なのは、最低でも4つ以上のメリットを挙げること。できるだけ数値化すると解像度が上がり、期待がリアルになります。

たとえば、資格を取りたい場合は、

・転職の選択肢が5社増える
・専門知識が身につき、同僚から頼られる
・月収が3万円上がる
・自信がついて堂々と発言できる
・将来の独立への第一歩になる

といった具合に複数のメリットを書き出すことで、脳は未来を具体的にイメージし、「やる価値がある」と認知し、期待値が上がってドーパミンを分泌します。逆に、1つ2つしかメリットが思い浮かばないと、脳が「大変なわりにメリットが少ないし、やめておこう」と判断するため、ドーパミンが出ず、やる気が起きません。メリットを書き出すことは単なる目標管理のテクニックではなく、期待値を高めて内発的動機を生み出す脳科学的スイッチなのです。

「遠すぎるゴール」はチームのドーパミンを枯渇させる

気をつけなければならないのは、ゴールは近すぎても遠すぎてもいけないということです。

ゴールが近すぎてすぐに達成できてしまう場合、期待が生まれずドーパミンが出ないため、やる気が起きません。東京の人が一番行かない割合が多い観光地は東京スカイツリーという調査結果があります。それは、「いつでも行ける」と思っていて、ドーパミンが出ないことが理由の一つかもしれません。多少の困難があるからこそ、人は達成したときにもたらされるメリットに対し、期待を抱くのです。

逆に、ゴールがあまりにも遠すぎる場合も、期待は生まれません。「100兆円起業を目指そう!」「世界のトップクラスに入ろう!」といきなり言われてもやる気が起きないのは、目標が遠すぎて、期待どころかむしろ絶望が生まれ、ドーパミンが出ないからです。

部下のモチベーションを高める「ドーパミンマネージメント」とは

職場でよくあるのが、優秀なプレーヤーがリーダーになったときのすれ違いです。自身が優秀で、かつゴール型のリーダーは、「高い視座で大きな目標を示せば、みんなが自然にやる気を出すはず」と思い込みがちです。ところが実際には、遠すぎるゴールに部下はついていけません。するとリーダーはいらだち、「なぜやれないのか」「意識が低い」と部下を責めます。その結果、チーム全体のドーパミンが枯渇し、部下はますますやる気を失ってしまうのです。

「当たり前の目標」だと思っているのはリーダーだけで、部下は絶望している。ゴールが遠すぎることは、組織にとっても最悪の落とし穴だと言えます。

成果を上げる人は、決して特別な才能を持っている訳ではありません。脳を“どう動かすか”を知っているだけです。たった1分、「メリットを4つ書き出す」――それだけで、あなたの脳は確実に未来に向かって動き出していくでしょう。

【その他の記事はこちら】

脳科学者・西剛志「勝者の思考」
西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて4万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』など海外を含めて累計43万部突破。最新刊は『脳科学でわかった仕事のストレスをなくす本』(2025年10月30日発売)。

TEXT=西剛志

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