ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は田島一貴の『若手が伸びる会社が育成でやっていること』をご紹介。

田島一貴 著/クロスメディア・パブリッシング(インプレス) ¥1,738
世代間の価値観の壁を壊す、生きた体験による育成メソッド
先日、吉本興業の門を叩いた芸人の卵に「コスパよく最速で売れるには?」と聞かれて驚いた。約1万人の若手を育成してきた私でも、令和世代が持つ価値観に戸惑うことがある。そんな折に手に取った本書は、世代間の壁について理解を深めるのに最適であった。
著者は、社員ひとりあたり1.2億円を稼ぎだすという中小企業の経営者。離職や腰かけ社員が増えている現代にあって、少数の新入社員を育成し戦力として定着させてきた氏のメソッドは、職場で培った生きた体験に溢れている。
上司よりもSNS上の「推し」の言うことを信じている若者は、どうすれば心を開くのか? 令和世代は上司のどんな話題にもっとも興味を抱くのか? 正解を欲しがり失敗を怖がる若手に新しい業務にチャレンジさせるスイッチとは何か? などその事例と打開策は、限られたリソースで育成している少数精鋭企業ならではの苦悩とアイデアに満ちている。
読了後、「若手が伸びる会社」とは私たちを含めた先行世代が新たな思考と視野を手に入れていく「リーダーが伸びる会社」でもあるのではないかと思った。それは実に心地よいマインドリセットであり、新鮮な境地だった。
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として数々の人気番組を担当。NSC(タレント養成所・吉本総合芸能学院)の講師も務めており、令和ロマンをはじめ、多くの教え子をM-1に輩出している。