伝えたはずなのに、伝わっていない……。言葉で伝えても、なかなか伝わらない。いくら言葉を尽くしても、自分がイメージすることと伝えた相手がイメージすることが一致しない“うまく伝わらない”現象に頭を抱えるビジネスパーソンは多いだろう。これを解消すべく本当に伝わるコツを、40万部のベストセラー著者でもある脳科学者・西剛志が伝授する。『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)から一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

子どもに勉強をしてほしいときに効果的なひと言
こんな相談を受けることがあります。 「子どもに勉強しなさい! とつい怒鳴ってしまいます。だって、勉強しないでゲ ームばかりなんです。どうしたら怒鳴らずに勉強をしてくれるでしょうか?」 勉強をしてくれない子どもに対してどうしたらいいか? こういった悩みを持っている人は多いですよね。
私がすすめる方法は「逆命令法」です。 「そんなに勉強が嫌なら、絶対に勉強しないでね」と伝えるのです。
浦島太郎は「この箱はあけないでください」と言われていたのに、あけてしまいました。ダメと言われると、逆に気になってくる。これが「逆命令法」です。小さな子どもに、「この箱は絶対あけたらダメだからね」と話して、その部屋を去っていくと、子どもはその箱に関心が向き、あけたくてしょうがなくなります。こっそりあけてしまう子どももいます。
「逆命令法」は、命令されれば逆をやりたくなるという脳の特性を活用した方法です。これを心理的リアクタンスというのですが、うまく活用することで、勉強への関心や興味を生む力を持っているのです。ダエメン大学の調査でも、学生たちに60語の単語をしっかり覚えてもらいました。その後、下記の2つのパターンの声をかけてみた実験があります。
① 「絶対に忘れないでね」
② 「忘れてもいいよ」
その結果、なんと②の「忘れてもいいよ」と声をかけたほうが、4%以上成績がよかったことがわかったのです(4%といっても、単語数では60語中2〜3語になるので試験では意外と大きな点数の差につながることがあります)。
「勉強しないでね」という逆命令をするときは、併せてここまで紹介してきた痛みと快感を伝えると、より効果が上がります。
「そんなに勉強が嫌なら、絶対に勉強しないでね。ただ、あなたが将来こうなりたいと思っても、勉強をしてこなかったことで、そのチャンスを逃してしまうかもしれないけど、それはあなた自身が決めてね!」
こう言ってもまだ勉強をしない子どももいると思います。そのときもあきらめずに、繰り返し「逆命令」と「痛みと快感」を伝えていくと、徐々に変化していく可能性があるでしょう。

脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて3万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』、『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』など海外を含めて累計42万部突破。