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2025.03.18

期限をやぶる部下も、長年恋人がいなかった人も変わった!? 脳科学的「締め切り」の設定方法とは

伝えたはずなのに、伝わっていない……。言葉で伝えても、なかなか伝わらない。いくら言葉を尽くしても、自分がイメージすることと伝えた相手がイメージすることが一致しない“うまく伝わらない”現象に頭を抱えるビジネスパーソンは多いだろう。これを解消すべく本当に伝わるコツを、40万部のベストセラー著者でもある脳科学者・西剛志が伝授する。『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)から一部を抜粋して紹介する。【その他の記事はこちら】

結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ
Unsplash / aranprime ※画像はイメージ

解像度を上げる「締め切り効果」

解像度を高めるためにやってほしいことがあります。それが「締め切りの設定」です。具体的には、「いつまでにやりたいですか?」という質問です。ただし、ただ締め切りを設定すればいいわけではありません。相手の解像度を上げる締め切りの設定方法があります。

それが、「いつまでにやってください」ではなく「いつまでにやりたいですか?」と質問することです。

「これからは締め切りをちゃんと守ってください!」と締め切りを守れない相手に伝えても、実は相手の脳の中ではそのことの解像度が高まっていません。

一方で、「いつまでにやりたいですか」と質問すると、相手は「自分で決める」という行為をします。その際、具体的に自分ができそうというイメージを持って回答するので、より実現性が高まるのです。答えた瞬間に、その日までにやっている自分がイメージできます。そうすると行動の確率が上がるのです。

自分で決めて、自分で答えたので、自分への約束になっているからです。どうでしょうか。簡単な方法ですよね。

たいていの人は約束を守ろうとします。約束を破ることは、守ろうとしている自分の認知とのズレになります。ズレを避けたいと思い、行動をするのです。これを「認知的不協和の回避」といいます。自分との約束はちゃんと守ろうとする。脳っておもしろいですね。

繰り返しますが、「(いついつまでに)やってください」ではなく「いつまでにやりたいですか?」という聞き方が大切です。

この方法は私もよく使っています。仕事で人の行動力を改善するサポートをしているのですが、仕事相手のなかには行動力がある人もいれば、行動になかなか移さない人もいます。行動しない人に無理にやらせようとしてもうまくいきません。行動に移さない仕事相手に対して悩んでいたときに生まれたのがこの方法です。

打ち合わせのときは「ぜひやりたい!」「やります、やります!」など、最初は乗り気になるのですが、時間が経つにつれてトーンダウンしていくことがよくありました。結局、全然やらないわけです。

そうなってしまうのは、私の伝え方が悪かったんだと気づきました。要は、相手の頭の中にハッキリしたイメージができてなかったわけです。それを改善するために「いつまでにやりたいと思いますか?」と聞くように変えると、行動に移す率が上がったのです。

たったひとつの質問をしただけです。命令はしていません。それだけで行動力が大きくアップしました。

ほかにもこんな話があります。知人で「早く結婚したい」と長年言っている人がいました。でもなかなか縁がなく、結婚できずにいたんです。ある日、私はこう質問をしました。「いつまでに理想の人と出会いたいですか?」

すると、こう答えました。「クリスマスまでには出会いたい」。

私の質問に答えた瞬間に、彼の頭の中に「(東京の)表参道のクリスマスイルミネーションの中を彼女と二人で歩いているイメージ」が鮮明に出てきたそうです。気持ち的にも高揚しているようで、「本当に実現したい!」と言っていました。

そのときは6月。クリスマスまでは約半年でした。

そこから彼の行動が大きく変わったそうです。出会いが多い場所に訪ねていったり、人と会うたびに、誰かいい人を紹介してほしいとお願いしたり、とにかく出会いのきっかけが増える行動をしていったんです。すると、なんとクリマスの日に1通のメールが私のところにきていました。「まさか」とドキドキしながらメールを開けると「いま、彼女と一緒に街路樹のイルミネーションの中、手をつないで歩いています」と書いてあったのです。

私が質問をするまで5年間、まったく出会いがなかったそうなんですが、その質問に答えて半年で出会いがあったのです。その後、結婚もしていまでは幸せな家庭を築いているそうです。これは何も運を引き寄せたとかそういうことではありません。

有名な「重要度と緊急度のマトリックス」があります。緊急度の高いことは実行に移すが、重要度が高くて緊急度の低いことの実行度は低い、というものです。このマトリックスでは、緊急度ばかりに意識が行ってしまうと、大切なこと、やりたいことがずっとできないままということを伝えてくれます。重要度の高いことをやらない理由は、締め切りがないからではないでしょうか。そこで、重要度の高いことに締め切りを設定します。「いつまでにそれを(重要度の高いことを)やりたいですか?」と自分に質問します。

こうすれば、長年、やりたいと思っていたことができるようになる。人生で挑戦できたらいいなと思っていたことに挑戦できる。そんな人生を変える行動力が期待できるのです。

締め切りの設定と同時にやってほしいのが、重要度の高いことの解像度を上げていくことです。解像度を上げ、締め切りを設定をする。それで行動力を上げていきます。

解像度が明確になると、気持ちが変わり、行動が変わります。行動が変わると、得られる結果もおのずと変わっていくのです。

アメリカの大富豪、オプラ・ウィンフリーはこんな言葉を残しています。「準備万端の人にチャンスが訪れることを幸運と呼ぶ」。まさに解像度を上げておくことは、結果を得るための準備になります。

解像度が低い、イメージができない、抽象度が高い。これらの状態は「腑に落ちていない」「理解ができていない」ということです。理解できないことは、行動に移しにくい。この構造を覚えておけば、さまざまな課題解決や夢の実現も可能性が高まります。

脳科学者・西剛志「勝者の思考」
西剛志/Takeyuki Nishi
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。武蔵野学院大学スペシャルアカデミックフェロー。T&Rセルフイメージデザイン代表取締役。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。子育てからビジネス、スポーツまで世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、大人から子供まで才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて3万人以上に講演会を提供。『世界仰天ニュース』『モーニングショー』『カズレーザーと学ぶ。』などをはじめメディア出演も多数。TBS Podcast「脳科学、脳LIFE」レギュラー。著書に20万部のベストセラーとなった『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』など海外を含めて累計42万部突破。

TEXT=西剛志

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