英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第276回。
カリカリって猫の餌だけど、美味しいの?
「カリカリって美味しいですね、あれは日本のものでしょう?」
先日、日本語ペラペラのアメリカ人とオンラインで話していたら、そう言われました。
猫を飼っている私としては「カリカリ」と言われると即座に猫のドライフードを思い出します。このアメリカ人は、日本製の猫の餌をそれと知らずに食べているのか? だったらなんと注意したらいいのでしょうか。「あなたが美味しいと言っているそれは猫の餌ですよ」と言われたら、かなりショックを受けるでしょうから、オブラートに包んでそれとなく気づかせる方がいいでしょう。しかし一体どうやって……というか「カリカリ」って食べたことなかったけど美味しいんだ……。
そうグルグル考え込んでいる間に、彼が画像検索でその商品を見せてくれました。
KariKari Garlic Chili Crisp
画面にはそう書かれた瓶詰めが映っていました。パッケージの隅にはカタカナで「カリカリ」とも書かれています。
よく見るとそれは、カリカリに揚げたにんにくチップと、ナッツ類が赤い油の中に入っている、日本でいえば「食べるラー油」にかなり近い商品でした。アメリカでよく売られている商品だということです。
「なんだ、食べるラー油か。カリカリって言われたから猫とか犬のドライフードを思い出してびっくりしたよ」
と言ったら衝撃を受けていました。彼はこの商品名のせいで「食べるラー油」のことを日本語で「カリカリ」というのだと思っていたそうです。
ちなみにアメリカのネットスーパーのサイトでこの「KariKari Garlic Chili Crisp」の口コミを見ると、こんなものがありました。
I was given a jar of this by a friend who is an incredible cook, and I was immediately hooked.
(料理がめちゃ上手な友達から1瓶もらったんだけど、即ハマったわ)
This is a fantastic product, so I bought two as gifts.
(これ最高、プレゼント用に2個買った)
最初の口コミの“hooked”が一瞬なんのことかわかりませんでしたが、釣り針の「フック」のことで、「好きすぎて囚われてしまった」というような意味でも使われるということです。
アメリカでもかなり好意的に「食べるラー油」が受け入れられているようです。
にんにくチップが「カリカリ」しているから、日本語のオノマトペ、Kari Kariを商品名にしたのでしょう。
愛猫家の秘書が担当役員に言い間違い…
蛇足ですが、以前つとめていた会社の役員秘書は大の愛猫家でした。そして彼女のボスである役員は毎日、栄養補給として大量の錠剤サプリメント(噛むタイプのもの)と、小袋に入ったゼリーを摂取しており、時間になると秘書はそれらを持ってくるように言われていました。
その日も「そろそろサプリの時間だな。錠剤とゼリー両方持って行くかな? それともゼリーだけでいいかな?」そう思って、つい「ちゅるちゅるは召し上がりますか? それともカリカリですか?」と聞いてしまったそうです。幸いにもボスは犬猫を飼っておらず、彼女がなにを言っているかわからなかったそうです。
(「ちゅるちゅる」とは「チャオちゅ〜る」という商品で小袋に入っている液状の餌です。袋から直接猫の口に入れるため、同じく袋から出さずに「ちゅる」っと吸って食べるタイプのゼリーによく形状が似ているのです)
ですので、すべての日本人にとって「カリカリ=犬猫の餌」ではないのだと思います。しかし「でも一応、日本人の前では『Kari Kari美味しい』って言わない方がいいですね、驚かせてしまいますね」とそのアメリカ人は反省していました。
今度アメリカに行く際は、ぜひスーパーで「KariKari Garlic Chili Crisp」を買ってどれほど美味しいカリカリなのか、試してみたいと思います。