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2024.09.10

できない部下を嘆く前に……中間管理職は“価値観のギャップ”を埋める努力をせよ

2023年、107年ぶりの甲子園優勝を果たした慶應義塾高校野球部のメンタルコーチを務める吉岡眞司氏。吉岡氏によれば「最近の若いヤツは…」と嘆くリーダーたちには、ある視点が欠けているという。『強いチームはなぜ「明るい」のか 』より一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】

『強いチームはなぜ「明るい」のか 』
Unsplash / Jud Mackrill ※写真はイメージ

価値観のギャップは事前に考えを伝えることで解消できる

チームというのは、他人同士の集まり。メンバー一人ひとり、生きてきたバックボーンや経験、年代、考え方、価値観はそれぞれ異なるものです。

近年では会社組織でも「ダイバーシティ&インクルージョン」をキーワードに、異なる価値観を理解し、受け入れることの重要性が叫ばれています。とはいえ、自分とは異なる価値観を理解し、受け入れるのは、言うほど簡単なことではありません。

身近な例を挙げると、「時間は守りましょう」と言われれば、誰もが「そのとおり」と思うでしょう。しかし、その「時間は守りましょう」という言葉に対する受け止め方は、実は人それぞれ微妙に異なります。

たとえば、あなたが部下とともに、午前10時に社長と待ち合わせをする予定があったとします。あなたは「社長を待たせるわけにはいかない」と10 分前には待ち合わせ場所に到着。その5分後に(約束の時間の5分前に)、社長が到着しました。しかし、あなたの部下はまだ現れません。あなたが社長の顔色をうかがいながら冷や汗をかいているところに、部下が何食わぬ顔で待ち合わせ時刻ピッタリに到着しました。

「何をやっているんだ! 社長との待ち合わせなんだから10分くらい前には到着しているべきだろう?」
「どうしてですか? 遅刻していないのだからいいじゃないですか」

このように「時間を守る」という言葉の受け止め方は、人それぞれ解釈が異なるのです。先ほどの例で言えば、社長もあなたも部下も、「10時に集合」という時間に対する約束は守れていました。しかし、一人ひとりの価値観や常識が異なることで、行動に微妙なズレが生じストレスを抱えあう――このようなことが、どの組織にも起きているのです。

「まったく、最近の若いヤツには時間を守る感覚がないのか。困ったものだ……」

このように、価値観の相違を一方的に相手の人間性に求めて片づけることは簡単です。しかし、それでは、価値観のギャップは永遠に埋まらず、お互いにずっとギクシャクしたままの関係が続いてしまいます。

同じチームで身近に接している人ほど、「同じ価値観を持っているはずだ」「言わなくてもわかっているはずだ」と、私たちは勘違いをし、その前提でコミュニケーションを重ねがちなのです。だからこそ、一旦その前提を外して、ていねいに言葉を投げかけながら、見解や価値観の相違の溝を埋めていくコミュニケーションが非常に大切なのです。

「待ち合わせする相手が目上の方であれば、僕は10分前には待ち合わせ場所に着くべきだと思っている。もし君が10分前に来なかったら、そのときは一言言うかもしれないよ」

このように、「時間を守る」ということに対する自分の考えを、前もって相手に伝えておく。このひと手間だけで、コミュニケーションのギャップはかなり解消されます。

話し合いながらお互いの「譲ってもいい」範囲を共有する

「いや、課長はそうおっしゃいますが、なぜ約束の時刻ちょうどに到着するのがダメなんですか?」

あなたが自分の考えを伝えたとしても、それでも相手と価値観が折り合わないことがあります。そのときはどうすればよいでしょうか?

一言で「価値観」といっても、人には「これが理想」とする範囲と、「これくらいまでなら譲ってもいいな」と思える範囲があります。

ベストなのは、お互いに理想とする価値観の範囲が重なること。ただ、そうはいかなかったとしても「譲ってもいい」と思える範囲内で折り合いをつけることができればOK。そのように考えてみるのです。

先ほどの待ち合わせの例で言えば、あなたにとっての理想の範囲は「10分前には着いているべき」。一方、部下にとっての理想の範囲は「時刻どおりに到着していれば大丈夫」。お互いの理想はピッタリとは重ならないけれど、「譲ってもいい」と思える範囲をどこまで広げられるかについて、お互いに歩み寄りながら折り合いをつけるのです。

「時刻どおりに到着するのは、決して遊んでいるわけではありません。アポイント先での商談の準備に時間をあてたいんです」
「君の言うことは間違っていないよ。でも、君も5分前に着いていたら、みんなが余裕を持って出発することができるし、忙しい社長を待たせなくても済むよね。だからせめて5分前には到着しておくのはどうかな?」

このように、「理想」とする範囲と「譲ってもいい」と思える範囲について、同じチームの身内だからこそ、コミュニケーションをとって、お互いに歩み寄りながら、重なり合うポイントを探るのです。お互いの範囲が重なり合うポイントは、よほどのことがないかぎり見つかることでしょう。

TEXT=吉岡眞司

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