最先端のテクノロジーを活用し、ドバイ発展のために日々、研究と開発に邁進するドバイ未来財団。財団が思い描く未来、そしてドバイのあるべき姿とは? 【特集 熱狂都市・ドバイ】
ドバイの未来を象徴するランドマーク
ドバイの幹線道路沿いに鎮座する、中央にぽっかりと穴が開いた、高さ約77mにもなる独創的な形の建物。「世界で最も美しい建築物のひとつ」とも呼ばれ、メタリックに輝く湾曲したファサードには、アラビア語のカリグラフィーがびっしりと刻まれている。この文字はムハンマド首長が未来について語った名言の一説を引用したものだ。楕円形の建物は人の目の形をしており、中央の空洞は未知の世界、そして緑の丘は安定性と持続可能性を表しているという。
2022年2月、ドバイの中心地に誕生したこの「未来博物館」は、2071年の世界を体験することができる没入型の施設だ。2071年はUAE建国100周年にあたる節目の年。来館者は今から48年後の宇宙や地球の“予想図”を巡りながら、持続可能な未来に向けたヒントを探りだしていく。
館内は7つの階層に分かれ、そのうち5フロアが展示フロアとなっており、アヤという名のバーチャル・ホストに導かれながら宇宙資源開発、生態系、バイオエンジニアリングなどさまざまな分野の未来図を見学する。
例えば、5階では宇宙ステーション内部を模した展示室で月を利用した再生可能エネルギーの開発や宇宙開拓の可能性について紹介。4階は「HEAL INSTITUTE(癒しの研究所)」と名づけられ、気候変動によりダメージを受けた地球の自然生態系を、バイオデザインの技術で修復していく過程が展示されている。
また、被災地で活躍するロボットやドローン、空飛ぶクルマ、パワードスーツなど、まるでSF映画に出てくるような近未来のテクノロジーを紹介するフロアもあり、その技術の飛躍的な進歩には誰もが驚かされるだろう。
未来のために世界中の優れた知性をつなぐ
この未来博物館は、ドバイ未来財団が手がけたプロジェクト。財団でチーフ・マーケティング・オフィサーを務めるアブドゥラ・アル・ヌアイミ氏は、ドバイの未来像についてこう話す。
「財団の大きな役割のひとつは、未来へのチャレンジに備えてドバイの競争力を強化していくことにあります。ドバイは2023年、2033年までの10年間で自国のGDPを倍増させ、世界の経済都市のトップ3に入るという目標を宣言しました。そんななか未来財団ではAIやロボット工学、3Dプリンティングといった次世代先進技術の研究・開発に尽力。さらには、ナレッジ・プラットフォーム、インキュベーター、ラボなどを含む、イノベーション・エコシステムを構築し、国内のみならず世界各国から優れた人材を集めて事業を展開しています」
その言葉どおり、「ドバイ・フューチャー・ラボ」は地域の需要やニーズに関連した技術、サービス、システムの開発に焦点を当てた応用研究施設として、財団によって設立された。このラボは、ロボットシステムを迅速に開発するための近代的な設備も備えており、優秀な技術者たちがロボット工学やAIの分野で最先端の研究を進めているのだ。それらのロボットシステムの一部を、ラボで見ることもできる。
他にも、ドバイ・フューチャー・アクセラレーターというスタートアップ支援のプログラムを組み、起業家たちにオフィスを提供。政府機関と協働する機会も与えるなどのサポートも行っている。
未来への希望を持って人々が働いていること。それこそが、今のドバイの爆発的な成長を支えているのだ。
「国の発展に大事なのは、人々に具体的なビジョンを提示すること。それを可視化させたのが未来博物館であり、ドバイ未来財団なのです」
世界最先端の未来都市を目指すドバイ。その鍵は、未来財団が握っている。
この記事はGOETHE2023年12月号「総力特集: ヒト・モノ・カネが集まるドバイ」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら