35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第219回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
What’s your deal?=あんた、何者?
先日、英語の勉強のために動画サイトで「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランドのインタビューを見ていました。無茶苦茶早口なので、英語字幕を出しても追いつかず、いちいち一時停止して英語字幕を読むという体たらくでしたが、その都度イケメンのさまざまな表情を一時停止で楽しめるのでそれはそれで楽しかったです。
そのインタビューではこんなことを話していました。
イギリス人であるトムは、アメリカのカルチャーをほとんど知らず、2017年『スパイダーマン:ホームカミング』の撮影前に、「アメリカ人高校生役をやるんだったら、一度アメリカの高校に潜入させて、体験させてくれよ」と冗談を言ったそうです。
マーベルスタジオはそれを本気にし、実際にブロンクス・ハイスクール・オブ・サイエンスという名門校に、偽名で彼を潜入させました。イギリス訛りを封印し、転校生を装ってやってきたトムに、隣の席の可愛い女の子が、こう声をかけたそうです。
What’s your deal man?
Dealとは直訳すると「取引」という意味で、「あなたの取引はなに?」ということになってしまいます。これがビジネスパーソン同士ならともかく、転校生に話しかける第一声としては少し違う気がします。
What’s your deal?=あんた、何者?/あんた、どうしちゃったの?
この場合は、上記のような意味で使われると、多くのスラング辞書には書かれていました。この質問は、基本的にWhat is going on with you?(どうしたの?)とか What's wrong with you?(なんか調子悪い?)と同義だそうで、主に「なにかおかしいな」と思った時に、相手に「どうしちゃったの?」と聞く時に使うようです。
トムと初対面でこう言った女子高生は、トムのことを知らないわけで「どうしちゃったの?」と聞いたというよりは、潜入で挙動不審になっているトムに「あんた、ちょっとおかしいけど、一体何者?」と聞いたのだと思われます。
Nuts= silly, stupid, or strange
それに対して、トムはこう答えたというのです。
Do you wanna know my secret? I’m actually Spider-Man.(僕の秘密を知りたい? 僕は実はスパイダーマンなんだ)
映画「スパイダーマン」も、最初はヒロインだけが彼をスパイダーマンだと知っているわけですから、もうこれは映画が始まりそうな状況、聞いていてワクワクしました。
そして、それを聞いて、彼女はこう答えたそうです。
You’re nuts bro.
「彼女は僕のこと、nutsって言ったんだよ!」とトムはその後も大笑いしています。そしてここがいちばん私には意味不明でした。
“You’re nuts bro”は直訳したら「あんた、ナッツじゃん」ということになります。ピーナッツの「ナッツ」です。「僕はスパイダーマンなんだ」という告白に対して「あんた、豆じゃん」では意味が通りません。またしても動画を一時停止してすぐ辞書を引きました。ケンブリッジの英英辞典ではこうなっていました。
Nuts= silly, stupid, or strange
「ナッツ」はつまり、「バカ」とか「変人」という意味だそうです。
「僕はスパイダーマンなんだ」
「は? あんた、頭おかしいの?」
という会話だったようで、納得しました。
トムは、すぐに「いや、実は僕はイギリス人で、スパイダーマンの役をやるんだ」と告白したそうですが、彼女はまったく信じなかったそうです。
最終的には、学校全体に「実はトム・ホランドでした」とネタバラシをして、生徒が大興奮したそうですが、転校初日にいきなり「僕はスパイダーマンなんだ」と言われても信じられなかったでしょう。
「スパイダーマン」制作に、そんなエピソードがあったと聞いて、改めて観直したくなりました。
そして、アメリカンハイスクールでも日常的に使われるこの2語、しっかり覚えておきたいです。
・Whar’s your deal?と言われたら、なにか不審に思われている
・Nutsと呼ばれたら、バカにされている
私はアメリカのハイスクールに行くこともないでしょうし、多分Nutsというスラングを使うこともないでしょうけれど、知っておくべき単語だと思いました。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。