世界の富裕層の間で高い注目を集めるアンティークコイン。40年以上にわたってコイン販売専門店を経営し、日本におけるアンティークコイン収集の第一人者である大谷雄司氏が、資産性、アート性、歴史的価値などその多様な魅力を解説する連載の第11回。
運がよければ手に入る!? “存在しないはずのレアコイン”
彼は、王位継承後に離婚歴のあるアメリカ人女性と結婚すべく、わずか325日で王位を退いた。そのため戴冠式は行われず、王室造幣局はコインの発行を断念。ロイヤルファミリー用など4セットのみを試作品として残したとされていた。
「ところが1998年、このセット以外の金貨が突如市場に現れました。当時の造幣局関係者が非公式に製造し、隠し持っていたという説が有力です」
似た話はアメリカにもあり、製造されていないはずの1913年製の5セント白銅貨が発見されたことがあるという。
「今では考えられないことですが、半世紀ほど前までは、造幣局長や局員が勝手にコインを製造して持ち帰ることもあったようです。ソ連崩壊時には、給与が支払われないことに腹を立てた国立造幣局員が、コレクターから私的にコイン製造を請け負い、お金を稼いでいたという話もあります。本来存在しないはずのレアコインが、今後も見つかるかもしれません」
Yuji Otani
1978年に外国貨幣の鑑定・販売を手がけるダルマを設立。自身も数千枚のコインを持つ収集家であり、著書に、『あなたも虜になる アンティークコイン』(幻冬舎)等がある。