世界の富裕層の間で高い注目を集めるアンティークコイン。40年にわたってコイン販売専門店を経営し、日本におけるアンティークコイン収集の第一人者である大谷雄司氏が、資産性、アート性、歴史的価値などその多様な魅力を解説する連載の第9回。
ニュートン VS コイン偽造組織
日本で発行されている紙幣のデザインが2024年に一新されます。主な理由は偽造防止のためだそうですが、国家と贋金(にせがね)との闘いは国や時代を問わず、繰り広げられてきました。例えば、17世紀のイギリスでも贋金が大量に出回っていて、コイン偽造のシンジケートまであったとか。
その撲滅に手腕を発揮したのが、万有引力の法則の発見などで知られる物理学者アイザック・ニュートン。実は彼、1697年にイギリス王立造幣局に入局し、1699年から亡くなるまで局長を務めていたのです。
ニュートンは部下をスパイとして街中に放ち情報を収集、偽造組織の摘発を行いました。偽造防止にも力を注ぎ、コインの縁を削り取りそれを溶かして贋金をつくるという手法を阻止すべく、縁にギザギザを入れることを考案。これは今もギザという偽造防止策として活用されています。
また、1717年には金と銀の交換比率を1:15・21と定めたニュートン比価を設定。これは、その後約200年にわたってイギリスの金銀比価として用いられ、イギリスの金本位制の契機になったとされています。希代の天才は、コインの分野でも天才だったのです。
Yuji Otani
1978年に外国貨幣の鑑定・販売を手がけるダルマを設立。自身も数千枚のコインを持つ収集家であり、著書に『あなたも虜になる アンティークコイン』(幻冬舎)等がある。