世界の富裕層の間で高い注目を集めるアンティークコイン。40年にわたってコイン販売専門店を経営し、日本におけるアンティークコイン収集の第一人者である大谷雄司氏が、資産性、アート性、歴史的価値などその多様な魅力を解説する連載の第4回。
コインのデザインは教養を測る物差し!?
アンティークコインが多くの人を魅了するのは、希少性や資産価値はもとより、その芸術性によるところも大きい。
「コインのデザインは、発行された年代や国によって異なり、ギリシャ時代であればギリシャ神話をモチーフにしたものが、王政時代は表面に皇帝や王族の肖像、裏面には国や家の紋章を刻んだものが多いです」
デザインを読み解くのに求められるのが、文化や歴史、紋章などにまつわる教養。一例を挙げるなら、百合はフランス、ライオンはイギリスの象徴といった知識があれば、コインのデザインからどの国のどの時代に発行されたものかが推測できる。
「例えばイギリスのコインの表面には、ラテン語で国王や女王を称える言葉などが刻まれています。ラテン語は現在使われていないものの、貴族など特権階級が長らく教養として学んできた言語。刻まれた銘文が理解できるかどうかで、教養の高さがうかがい知れます。それもあって、ヨーロッパの富裕層の間ではアンティークコインが子弟の教育にも活用されてきました。投資的価値からは一旦離れて、デザインに着目してコインを収集してみると、コレクションの幅も広がると思いますよ」
Yuji Otani
1978年に外国貨幣の鑑定・販売を手がけるダルマを設立。自身も数千枚のコインを持つ収集家であり、著書に『あなたも虜になる アンティークコイン』(幻冬舎)等がある。