知らぬ者が損をする。それが今の世の中だ。ことお金の話に至っては、これが如実に現れる。自身や家族を守り抜くためのお金の基本の“き”を、元東京国税局職員の小林義崇氏から学ぶ短期集中連載。第2回は無意識にやってしまう危険性がある申告誤りや期限遅れについて。『元東京国税局職員が教えるお金の基本』から一部抜粋してお届けする。#1
小林義崇／Yoshitaka Kobayashi
1981年福岡県生まれ。2004年より東京国税局の国税専門官として、株式投資や不動産投資に関する税務調査や確定申告対応等に従事。2年連続で東京国税局長より功績者表彰を受ける。2017年フリーライターに転身。
節税と脱税はまったく違う
節税と似た言葉ですが、「脱税」は絶対にやってはいけません。脱税とは、意図的に情報を隠すなどして税金を少なく申告したり、まったく申告をしなかったりすることを意味します。たとえば、「本当は売上500万円の契約なのに、300万円の契約と偽って確定申告をした」「取引先と口裏を合わせて、仕入代金を500万円水増しした」といったケースが該当します。
このような行為が疑われた場合、「税務調査」が実施されます。このとき、場合によっては、本人だけでなく、家族や取引先、利用している金融機関などに調査が行われます。そして最終的には、申告漏れや脱税行為について何らかの処分がなされます。
もし脱税が発覚すると、申告漏れの税額はもちろん、さらに「重加算税」という非常に重たいペナルティを課されます。重加算税の税率は、原則35〜40％ですから、たとえば偽造による申告漏れの税額が100万円としたら、ここに35万〜40万円が加算されるという計算です。
さらに、税金の未納に対しては別途「延滞税」というペナルティもあり、脱税や無申告を繰り返すと重加算税の税率がさらにアップするというルールもあります。状況によっては、隠していた利益以上の額が税金で失われる可能性もあるのです。
脱税ほど悪質でなくとも、無意識に申告誤りや期限遅れを起こした場合もペナルティが設けられています。申告誤りに対しては過少申告加算税、期限遅れに対しては無申告加算税という追徴税があり、それぞれ税率は原則5〜15％、10〜20％となっています。
たとえば、仮想通貨によって得た利益は雑所得として計算されますが、これは年をまたいで利益と損益を相殺することはできません。
極端な例ですが、1年間に1億円の利益をあげて、翌年この1億円を丸ごと失ってしまったとします。この場合、手元に残るのは0円ですが丸々1億円分が課税対象となってしまうのです。1億円の利益なら、控除を差し引いたとしても4,000万円ほどの所得税を支払う義務が生まれます。
こうしたしくみを知らずに、後から納税を要求されるケースがあります。しかもここに、加算税や延滞税のペナルティまで加われば支払い額は恐ろしい数字です。仮想通貨バブルとなった2017年に利益をあげた人の中には、知らず知らずの内に申告漏れを起こしてしまい、約3年後に多額の徴収を要求されて
破産に追い込まれたという人もいます。
他にも「せどり」によって多くの収入を得ている人の体験談が近年書籍化などで話題になっていますが、本業とは別に20万円以上の副収入を得れば納税の義務が生まれます。副業として認識しづらいかもしれませんが、転売で上げた利益も立派な課税対象なのです。その他にも、フードデリバリーなどの仕事も、空いた時間に1人でこなせるため中々納税に頭が向かないかもしれませんが、立派な副業となります。
脱税はもちろん、無意識の申告誤りや期限遅れも税務署は見逃しません。きちんとした節税を実践するようにしましょう。
『元東京国税局職員が教えるお金の基本』
¥1,540／幻冬舎
保険、確定申告、住宅ローン、相続、積立投資、インデックスファンド、NISA、iDeCo。知らない間に、あなたはお金で失敗している！ 国の資産を扱ってきたプロが徹底解説する、いま一番安心なお金の増やし方。
