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2023.03.10

日本は大きく遅れている?! 世界の金融教育事情の今とは

お金とは何か、投資とは何かを考える。連載「アフターコロナのお金論」とは……

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世界の金融リテラシーに追いつこうと動き出した日本

2023年3月21日から27日は世界中で金融経済教育を考えるグローバルマネーウィーク(Global Money Week)です。グローバルマネーウィークは、2012年から始まった取り組みで、特に子供や若者に対する金融教育推進のための国際的活動です。2020年からはOECDに事務局を置く金融教育に関する国際ネットワークの主催となっており、日本からは金融庁と日本銀行が参加しています。

期間中は世界各国のさまざまな団体が、子供・若者向けの金融教育を推進するイベントを行う予定になっています。日本では柔軟なスケジュールでの取組みを可能とするため、2023年3月11日から31日までの約3週間が開催期間となります。

2022年4月には日本でも高校で金融教育が必修化され、英会話やプログラミングに続く新しい教育として今非常に注目が集まっています。ただ、日本は金融教育という分野においては、世界で大きく遅れをとっていることを知っていましたか? 日本の教育水準は非常に高いのは有名ですが、金融教育=お金の勉強については実はぽっかりと抜け落ちてしまっていたのです。

今回は、世界のお金事情を見ていきましょう。

まず、金融教育の発祥の国といえばイギリスです。イギリスでは若い人が少額からでも投資ができるように、その促進をするための優遇制度としてISA(Individual Savings Account)という制度がつくられました。

1999年のことです。現在では成人人口のなんと約50%がISA口座を保有して自分で資産形成を行うことが当たり前になっています。ISAも当初は10年という期限つきで実施されていましたが、実施して効果を検証するなかで、若年層に対しても広く普及している実績がでたこともあり、制度の恒久化が決定しました。

それではお金のトレーニング。

イギリスで当たり前となっているISAですが、その制度を参考に日本でも少額での投資を税制優遇する制度が2014年にスタートしました。若年層の中で一気に広がっていますが、その制度とはなんという制度でしょうか?

答えはNISAです。ISAの「日本(Nippon)版」ということでNISA(ニーサ)という名称となり、広く知られることとなりました。現在1000万口座を超えて急拡大しており、2022年12月には制度の大幅バージョンアップも発表され、新NISAが2024年にスタートします。

NISAの元となった制度を持つイギリス。ロンドンは世界でも有数の金融都市で、世界金融センター指数では、ニューヨークについで世界第2位に位置づけられています。それだけにイギリス国民の金融への関心は高く、2014年に行われた金融リテラシーの国際調査によれば、イギリス国民の67%が、貯蓄・投資・借入について十分な金融リテラシーがあるとされています。日本は47%と大きく遅れをとっています。

金融リテラシーの向上のためには、学校教育におけるファイナンシャル・エデュケーション(金融教育)が欠かせません。イギリスにおいては、北アイルランド・スコットランド・ウェールズの3国が、イングランドに先行して金融教育をカリキュラムに盛り込んでいましたが、2014年に初めて金融教育がイングランドのカリキュラムに盛り込まれ、英国を構成する4国の全てにおいて金融教育が学校教育に正式に組み込まれることとなりました。またイギリスでは、金融教育に関して学校や地方自治体だけでなく、金融機関や企業の支援を受けた団体等も関わっており、統計、レポート、教材作成、学校教育の現場ですぐに使用できる授業プランの配布等を行っています。金融教育に関わるチャリティー団体も数多く存在します。

それでは同じヨーロッパのフランスはどうでしょうか?

フランスでは、「金融と教育」「みんなのための金融スキル」といったプロジェクトがNPO法人を中心に実施されており、若者から高齢者まで各年齢層に対して提供されています。学校を始め、職場や自宅などあらゆる場所で学ぶ体制が整っています。「金融と教育」プロジェクトでは、お金をいかに扱うかについて情報を提供し、お金の管理や過度な負債の回避、銀行サービスの活用、投資といった内容のセミナーを行っています。特徴としては、近年話題のビットコインに関する内容も盛り込まれるなど、最新の動向をフォローする動きも盛んです。

お隣のドイツはどうでしょうか?

ドイツでは、学校での金融教育として「生徒の銀行業」を2005年から実施しています。このプロジェクトは、14歳~18歳向けの金融教育プロジェクトとして立ち上がったものです。「生徒の銀行業」は、口座設定、信用、将来に対する備えから成り立っています。また学費調達ユニットでは、大学入学後の学費・生活費をどうするかといった内容も追加されています。それぞれのユニットにおいて、生徒たちはゲームやワークショップを通じて金融を学ぶことができるようになっており、口座設定、信用リスク、金融商品の種類、年金、預金と貯蓄、学費の予測、公的補助金などの基本的な知識を身につけていきます。また2008年には小学生向けのプロジェクトもスタートしました。

続いて経済大国、金融大国であるアメリカ。

アメリカではパーソナルファイナンスという考え方を大切にしており、子供の頃からお金のことについて学ぶことは当たり前になっています。お金に関する学校教育は、1960年代以来の学校における消費者教育の経験や、1970年代からの全国規模での経済教育の展開に見られるように、自立を促す実践的な教育としてカリキュラムに組み込まれ、今日まで続いています。アメリカでは、各州の判断で金融教育の普及が進んでいますが、約9割の州で高等学校までの教育段階にパーソナルファイナンスの内容が組み込まれています。

金融リテラシーは「支出と貯蓄」「クレジットと負債」「勤労と所得」「投資」「リスクと保険」「金融上の意思決定」の6つの領域に分けられており、18歳で学ぶ項目では、「投資を遅らせたときの退職後の結果と早くから投資したときの利得を比較しよう」といった内容もあり、自分ごと化されるようにより実践的に構成がされています。

それではお金のトレーニング。

日本では金融資産に占める現金・預金の割合が50%以上と世界でもまれにみる「貯金大国」として有名ですが、金融教育が盛んなアメリカでは現金・預金の割合は何%程度でしょうか?

答えは約10%です。日本と反対に、株式資産の比率が30%と非常に高くなっており、資産を自分で分散すること、若いうちから投資をすることが習慣化されているのです。

世界のグローバルマネーウィークの今回のテーマは、「Plan your money, plant your future(お金の計画を立て、未来への種をまこう)」です。お金の計画を立て上手に付き合っていくことは、自分の未来に確かにつながっていきます。子供たちが将来、自分の未来をお金で諦めないためにも、お金を正しく知り、お金の計画をたて、その実行をしていく。この世界的な取り組みがそういうきっかけになってほしいと思っています。

■連載「アフターコロナのお金論」とは……
お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

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過去連載記事

児玉隆洋/Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。著書に『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』がある。

ABCashについて

TEXT=児玉隆洋

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