お金とは何か、投資とは何かを考える。連載「アフターコロナのお金論」とは……
実践すべき、金融リテラシー「2:6:2の法則」
リスキリング。最近よくニュースなどで耳にするという方も多いのではないでしょうか。リスキリングとは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応することを目的として、業務上で必要とされる新しい知識やスキルを学ぶことをいいます。
社会人が学びなおすことはリカレント教育とも言われていましたが、経済産業省から「リスキリング」と呼ばれる言葉が提唱されて広く浸透していると思います。そしてこのリスキリングが求められるようになった背景には、時代の変化スピードのはやさがあります。
昔は、学校教育過程で知識・スキルを学んだら、そこで学びはほとんど終了。そのスキルを活かしてビジネスシーンで活躍していくというような働き方も多い状況でした。それは時代の変化が遅いときだからできたことです。時代の変化が遅いと、必要な知識・スキルもある程度固定化されるので、学校教育過程でそのほとんどを習することが可能でした。
でも今は変化の時代です。人類史上最速で世の中の変化スピードがはやいと言っても過言ではありません。人類が誕生したのが約500万年前。アフリカと言われています。そこから人類は、「言葉の発明」によりお互いに意思疎通ができるようになり、「文字の発明」により石板・木などに情報を記録することができるようになり、「紙の発明」によりその記録の複写が大量生産できるようになったことで情報伝達スピードがあがり、さらに「電話の発明」によりリアルタイムな情報伝達に物理的距離の制約がなくなり、そして「インターネットの発明」により世界中のあらゆる情報をリアルタイムで知れるようになりました。さらに「スマートフォンの発明」により人類はインターネットを持ち歩き、どこからでも常時接続できる状態になっているのです。
そのことによって、例えばシリコンバレーの起業家の斬新な考えもTwitterでリアルタイムで知ることができますし、パリの最新ストリートファッションもInstagramでいつでもみることができます。身分制度で学べるかどうか決まってた時代や、黒塗り教科書で情報統制がかかっていた時代とは大違いで、情報の透明性が飛躍的にあがり、情報流通スピードがゼロ秒の世界になったので、世界的に変化スピードが最高潮にはやくなっているのです。
そのように変化がはやいということは、世の中で求められる商品・サービスもどんどん変化するということです。そうなってくると、新しい需要がうまれ、だから新しい仕事も誕生します。そうなると仕事上で新しいスキル習得が求められるようになります。だからリスキリングが重要だと叫ばれているのです。そしてこの変化スピードがはやいことは世界的なことなので、リスキリングの取り組みは当然日本企業だけではなく、海外の企業でも積極的に行われています。これからの時代ではリスキリングを怠ると、どんどん世の中の変化についていけなくなり、今までと同じように生きていくことさえ難しくなるでしょう。
だからリスキリングは、これからの時代でお金を「稼ぐ」ためにも必要なこととなります。具体的にイメージしやすいリスキリングの事例で言うと、プログラミングスキル・デザインスキル・英会話スキルなどがあります。これ以外にも新しいスキルはどんどん誕生していくでしょう。ニーズが高まると予測できる分野のスキルを身につけることは、これからの時代を生き抜く条件とも言えるでしょう。
そのリスキリングのなかの1つに、お金のスキルもあります。2022年12月には新NISAの発表もあり、投資・資産形成・家計管理・相続などの総合的なお金のスキルを学びたいという人は、特に若い年代でどんどん増えてきている状況です。政府からも2022年8月に「金融教育を国家戦略にする」という発表がされましたが、国をあげて推し進めたいと言われているスキルがお金のスキルです。
2022年4月には全国高校で金融教育が必修化されましたが、私は高校を卒業しているZ世代・ミレニアル世代にも必要なスキルだと思います。私もミレニアル世代の1人ですが、数十年後の世界がどう変わっていて、そのとき日本がどうなっているのか、変化のスピードがはやすぎて想像が非常に難しいです。ただ大きな流れとして、世界は人口の急激な増加が続き、日本は少子高齢化で人口減少局面にすでに入っていますので、高齢者になっても働き続けないと生活が苦しいという人も増えていく可能性は非常に大きいと言えるでしょう。昔のように会社の先輩を見ていたらなんとなく自分の将来像が分かってくるような変化の遅い時代ではもうありません。
だから有効になってくるのが「リスキリング」なのです。時代の変化にあわせて学び、新しいスキルを身につけ続けるという姿勢を取り続けることが、この変化の時代の生存戦略です。
最後に、お金のスキルを1つ紹介します。
お金のバランスを考える時に用いる金融リテラシーが「2:6:2の法則」です。それは、収入が入ってきたらまず2割を貯蓄し、6割で生活し、2割を投資する、という個人のお金のポートフォリオルールです。基本的には収入が上がると支出も上がるものですが、このバランスを徹底できていると、不測の事態にも備えつつ、未来への投資を継続することができます。投資は、株・債権・暗号資産などの金融資産への投資だけではなく、自分という人的資産への投資も含まれます。これがリスキリングへの投資です。若いうちは2:6:2のバランスが難しい場合は、1:8:1でも大丈夫です。大事なのはルールを決めて投資を続けることです。
日々色々なニュースがあります。そういったものからも、世の中がどう変わっていくのかを自分の頭で予測し、その予測にそってリスキリングを続けること。これを継続できた人はどんどん稼げるようになりますし、反対に学びをやめた人は厳しい未来が待っていることでしょう。自分は自己投資に毎月いくら使えているか? 改めてチェックしてみると新しい発見があるかもしれません。
■連載「アフターコロナのお金論」とは……
お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。
児玉隆洋/Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。著書に『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』がある。