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2023.01.10

新NISA、住宅ローン引き上げ、ステーブルコインetc.2023年知っておくべきお金の変化

お金とは何か、投資とは何かを考える。連載「アフターコロナのお金論」とは……

お金論

2022年12月、新NISAの制度が発表されて大きなニュースとなりました。投資に興味はあるけどなかなか始めるきっかけがない・・・・・・と思っていた若い人にとっても、投資をスタートするよいきっかけになったのではないかと思います。

また、ABCashにお金の勉強をしたいと受講を申込む若い方も急増しています。新NISAは2019年の老後2000万円のニュースが日本中を駆けめぐった時と同じ規模の国民的トレンドになっています。

そんな新NISA、何が新しいのでしょうか。

そもそもNISAとは、イギリスのISAの日本版。株式や投資信託を売って得られた利益、配当で得られる利益が非課税になるという投資を促進する優遇制度のことです。国内外の上場株などに幅広く投資できる「一般NISA」、対象を投資信託に限った「つみたてNISA」の2つがあります。特に最近は20代、30代を中心に口座開設が急増していました。

そこに対してさらに政府は、2024年からの新NISAでは、つみたて型の年間投資枠を現在の3倍の120万円に、一般型を2倍の240万円に増やす方針を固めたのです。今までは、つみたてNISAが2042年まで、一般NISAが2023年までとなっており、2024年から一般NISAのみ新たな制度に移行する予定でした。しかし、今回の改正ではどちらも制度・非課税期間が恒久化されることとなったのです。

また、新NISAでは一般型を「成長投資枠」に、つみたて型との併用も認めます。一生での投資上限はなんと1800万円まで引き上げられ、そのうち成長投資枠が最大1200万円となります。たとえば成長投資枠に400万円投資した人の場合、つみたて型は1400万円が上限となります。さらにポイントして、買付残高で1800万円のため、1800万円分投資してもその後売却すれば、再投資が可能となるのです。

このように政府は「貯蓄から投資」の流れをつくる柱のひとつとしてNISAの抜本的拡充を掲げたのです。政府がここまで具体的に実行しているところに政府としても日本の将来経済の危機感を強く持っていることが感じ取れます。これからの日本が引き続き経済的に豊かに暮らせて、個人も人生の選択肢を持ち続けるためには、特に若い世代の投資が必要であり、それが国家戦略なのです。

今回の新NISAは、貯蓄から投資への非常に力強い改革であり、国の本気度の現れです。

それではお金のトレーニング。2022年夏、政府が国家戦略に制定した新しい教育はなんでしょうか?

答えは「金融教育」です。2022年4月から高校で必修化されましたが、全国民が金融リテラシーを身につけて自分の資産を自分で築けるように、国も本格的に動き出しているのです。

ここで本当に重要なことをひとつお伝えします。

それは金融リテラシーは投資リテラシーだけではないということです。

資産形成は、投資以外にも、保険、住宅、相続、節税、家計管理など多岐に渡ります。お金の総合的な知識を理解した上で投資も判断をしないと、投資する金額を誤ってしまったり、制度を知らないが故に損してしまうことも多々あります。

お金は総合力勝負なのです。

ところで新NISAで投資が盛り上がりを見せるなか、低金利を維持していた住宅ローン金利が、ついに2023年1月から0.2%程度引き上げに転じそうなことは知っていましたか?

日本銀行が12月に金融緩和策を一部修正し、長期金利が上昇したことがその理由です。メガバンクなどの金融機関は1月から住宅ローン金利を引き上げる見通しであり、またその他の銀行なども金利引き上げの動きに追随するとみられています。代表的な固定期間10年の基準金利は、長期金利の水準を元に決まります。日本銀行が長期金利の上昇を認める上限を0.5%に引き上げたことで、長期金利の指標となる新発10年物国債の流通利回りはそれまでの0.25%近辺から0.4%台まで急上昇しているのです。

ではお金のトレーニング。住宅ローンについてざっくりと計算してみましょう。5000万円を金利「1%」で借りるのと、金利「1.2%」で借りるのでは、支払総額はいくら違うでしょうか? ただし返済期間は35年とします。

答えは金利1.2%だと金利1%と比べて約「197万円」も支払総額が増えることになります。たった0.2%でここまで金額が変わる、だから金融リテラシーは重要なのです。住宅購入にはもちろん物件価格も重要ですが、それと同じくらい金利も重要。固定金利と変動金利、どっちを選ぶのか? 固定にするならいつ金利を固定するのか? によっても、100万円以上の差分が出ることも多々あります。

さらに、12月新しい未来のお金もついに国内流通解禁が発表されました。

ここでお金のトレーニング。流通解禁される新しいお金は、暗号資産の一種ですが何コインというでしょうか?

答えはステーブルコイン。価格の安定性を実現するように設計された暗号資産のことです。裏付け資産がないため価格変動が激しく、決済手段としての活用が進んでいない暗号資産の普及を促し、実用性を高めるために設計されました。

価格を安定させる仕組みの違いから、ステーブルコインは主に4つの種類に分けられます。米ドルなどの法定通貨を担保にコインを発行し、その法定通貨との交換比率を固定する「法定通貨担保型」、特定の暗号資産を担保にコインを発行し価格を連動させる「暗号資産担保型」、金や原油などの商品価格の値動きに連動させる「コモディティ型」、アルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」です。

金融庁は2023年にも、米ドルなど法定通貨との連動をめざすステーブルコインについて、海外発行コインの国内流通を解禁すると発表しました。預金などによる資産保全や送金上限を条件に取り扱いを認める方向です。ステーブルコインを使った決済が広がれば国際送金が早くて安価になります。流通にあたってはマネーロンダリング対策も求められることになります。

資産形成。お金のことを考えると、ついつい投資で増やすところだけに目がいきがちです。それはゴルフならドライバーの練習だけしているのと同じ。いいスコアを狙うなら、アイアンもパターも重要です。

ボクシングならパンチの練習だけしているのと同じ。試合で勝ちたいなら、ガードや持久力アップも重要です。資産形成も投資のことだけ考えるのではなく、資産形成を成功させたいなら、保険、住宅、相続、節税、家計管理も考えることが重要なのです。

2023年はお金の新時代の幕があける、変化の激しい1年になります。

お金の変化を敏感に察知し、柔軟かつスピーディーにお金の変化に合わせて資産形成を実践することが求められるでしょう。生き残ることができるのは強いものではなく、変化に柔軟なものだけなのです。

■連載「アフターコロナのお金論」とは……
お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

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過去連載記事

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。著書に『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』がある。

ABCashについて

TEXT=児玉隆洋

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