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2022.12.05

ガリガリ君が値上げした時、アメリカではどう報道されたのか?【お金トレーニング】

お金とは何か、投資とは何かを考える、連載、「アフターコロナのお金論」とは……。

weakeryen

円で資産を持っているということは、資産が目減りしているということ

2022FIFAワールドカップ、日本がドイツ、スペインに勝利し、決勝トーナメント進出を決めました。強豪が多いグループリーグのなかで素晴らしい快挙だと思います。早朝の試合でしたが、ライブで観ていた方もきっと多いのではないでしょうか。

サッカーも国ごとに特徴があり、プレースタイルが違っているのもワールドカップの面白さのひとつです。挑戦的に点をとりにいくスタイルもあれば、鉄壁のディフェンスで守り抜くスタイル、パスサッカーで組織力で戦うスタイルなど様々です。

プレースタイルの違いは、国民性や文化の違いも大きく作用していると思いますが、「お金」についてもそれは同じことが言えます。

アメリカ、ヨーロッパと日本を比べると、資産の貯金比率が一番高いのは圧倒的に日本ですが、株式などの投資比率が一番高いのはアメリカです。日本は保守的な国民性と言われており、アメリカと比べると変化を避ける傾向が高く、資産形成についてもそれが現れています。

現在、世界的な物価上昇が起きています。ニューヨークに旅行に行った友人は、「ニューヨークでランチに、ラーメンと餃子を食べたら3000円もした……」と言って嘆いていました。そしてニューヨークで働く人の給与も上がっています。スターバックスのアルバイトの時給は2300円にもなります。日本からみると超高額のアルバイトです。

ただ、これでもニューヨークでは物価高騰に給与上昇が追い付いていません。「時給2300円だと給与が安すぎて働けません」とスターバックスの従業員がストライキを起こしたニュースもあるほどです。それだけ物価高騰が急激すぎるということです。

それではお金のトレーニング。この物価上昇は世界的ですが、日本はこの30年くらいは物価がほとんど上がらずに横ばいできています。アイスのガリガリ君が値上げした時に日本ではついに値上げ!!とニュースになりました。ではアメリカではどうニュースになったでしょうか?

答えは、アメリカでは「日本では値上げがニュースになっている」とニュースになったのです。それだけアメリカでは物価上昇は当たり前。でも日本は値上げが少ないので、海外から見たら「安い」となったのです。

それによって海外からの旅行者が急増しています。日本は綺麗で、安全で、ご飯も美味しくて、安い国。この30年で観光にとても適した国になりました。

さらに今は歴史的な「円安」状態となっています。これは相対的に円の価値が下がっているということ。円で資産を持っていると相対的に資産が目減りしているということになります。

それなのに日本の貯金比率にはなかなか変化がありません。保守的で変化を嫌う国民性が顕著に現れています。「NISAの拡充!」「貯蓄から投資へ!」と国がスローガンを打ち出しても、資産形成はとりあえず貯金だけ、という方もまだまだ多い状況です。

資産形成の基本中の基本は「分散投資」です。卵をひとつの籠に盛るな(複数の籠に卵を入れておけば、ひとつの籠が壊れてもすべての卵は割れるわけではない)というリスク分散の話があるくらい、分散投資は基本。

ですが、日本円で貯金だけしているということは、円安で相対的に価値が目減りしている日本円に、自ら好んで「集中投資」している状態と言えるでしょう。

株、不動産、債権、金、暗号資産などたくさんの資産が存在し、その小口化も急激に進歩しています。この状況で貯金だけしているのは、変化を嫌うあまりに不要なリスクを取り続けている状態。テクノロジーの進歩により、分散投資は少額からできる時代です。国は私たちに少しでも分散投資をスタートして、資産形成を実践することを強く求めています。

その一環として、2022年4月から「金融教育」が高校で必修化されました。国語、数学、理科、社会、英語、金融(お金)となる時代に突入したのです。

さらに「金融教育」が国家資格になる時代もそう遠くない未来です。政府は「金融教育」を国家戦略として推進するための体制を整備すると発表しました。2024年、官民一体となった新たな推進機構を立ち上げ、個人の資産形成を中立的に助言する専門資格を新設する予定です。これはアメリカやイギリスを参考に、個人が資産形成を相談できる専門家を身近にみつけられるようにする狙いがあります。

ここで「中立性」という点が重要だと私は考えます。

例えば金融教育を提供するセミナーに参加します。もしくはFPに相談するとします。勉強になったなと思っていたら、その最後に「ではこの投資信託がおすすめです」「この保険商品の紹介をします」「この投資マンションが今ならお買い得です」とセールスされたらどうでしょうか?

金融教育が、特定の金融商品を売るためのセールストークに使われていることもあるかもしれません。

だからこれから私たちは「出口に金融商品の販売がないか?」ということをしっかり見抜くスキルも必要なのです。でもこれは、Z世代やミレニアル世代は普段から持っているスキルです。なぜならSNSでインフルエンサーの投稿を見て、これは案件の投稿なのかそうでないのかを、見分ける習慣がついているからです。

円安で資産分散が求められ、国がここまで「金融教育」の重要性を掲げると、お金の勉強をフックにして、金融商品を強引に販売する業者も増えることが予測されます。この中立性を見抜くスキルはますます重要になってくるでしょう。

■連載「アフターコロナのお金論」とは……
お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

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過去連載記事

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。著書に『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』がある。

ABCashについて

TEXT=児玉隆洋

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