“カルチャーを着る”という意識が、Tシャツに新たな価値をもたらしてからすでに半世紀余。1980〜90年代のヴィンテージTシャツには、当時のストリートが放っていた圧倒的な熱量が、今も色濃く息づいている。ムービーTシャツ編。人気スタイリスト・野口強による連載「The character of G」。

1.ʼ90年代がにわかに蘇る缶入りのデッドストックT
モダンなオレンジのタイトルロゴで、作品のアイデンティティは一目瞭然。ダニー・ボイル監督の出世作としても知られる1996年公開の映画『トレインスポッティング』のTシャツは、作品のキービジュアルが、キャッチコピーとともにプリントされた缶入りのデッドストック。ボディの状態もかなり良好で、Tシャツと同じ写真を着色した缶表面のデザインもスタイリッシュ。

2.物語のキーモチーフがフロントに大胆にオン
映画『12モンキーズ』は、鬼才テリー・ギリアム監督が手がけた1996年に日本で公開された話題作。映画のタイトルでもあり、ストーリーのキーとなる時計仕立ての猿が配されたステンシル塗装を、フロントにダイレクトにあしらった1枚は、アーティスティックな趣が出色。グレーボディに赤というシンプルデザインながらも、インパクトのある一着に。

3.作品の雰囲気をダイレクトに伝えるクールなグラフィック
ジョニー・デップ主演で、2000年に日本公開。映画『スリーピー・ホロウ』は、ティム・バートン監督の独特な世界観が堪能できるホラームービーだ。作中で中心的なキャラとなる首なし騎士をシルエットで据え、月夜を彷彿とさせるクールなグラフィックが秀逸。リラックスフィットのブラックボディなので、そのままストンと着ても十分にサマになる。

4.自身の横顔をあしらったユーモアのセンスに脱帽
サスペンスの巨匠と呼ばれ、『知りすぎていた男』『鳥』『サイコ』など、数多くの名作を手がけたアルフレッド・ヒッチコック監督。彼のサインをあしらったTシャツは、自身の姿を線で描いたアーティスティックなドローイングつき。誰しもがそのシルエットでひと目で彼だとわかる独特の風貌で愛された、20世紀の巨匠らしいユーモアが光る。

5.不朽の名作アニメを大人の今こそ“着る”
1988年に映画公開されて以来、伝説的作品として今も人気が続く、大友克洋原作・脚本・監督のアニメーション映画『AKIRA』。ホワイトボディにくっきりと残るプリントの鮮やかさはもちろんのこと、コマ割り風のバックプリントのグラフィカルな構図も傑出。ファンならずとも、友人や仲間間でのカンバセーションピースとしても、大いに盛り上がりそうだ。
