35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第178回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
get by=すり抜ける、だけではない!
「英語を勉強している」と英語圏出身の方に言うと、「そうか、では通訳なしで話そう」となることが多いですが、実際はジェスチャーを交えてかろうじてコミュニケーションがとれるだけなので、仕事の話や複雑な話はできません。
先日もイギリスの方にオンラインで取材する機会があり、「こんにちは、今日は時間をつくってくれてありがとう」くらいは直接言おうと英語で挨拶をしました。
案の定「英語できるなら、このまま話そう。わからないところだけ通訳に頼ればいい」と言われましたが、時間も限られていますし、なによりあとでテープを聞き直す際に英語を文字に起こすのは俄然私にはハードルが高く「いや、通訳さんに頼らせてくれ」と懇願しました。
相手方は残念そうにこう言いかけました。
Oh You just get by……….
ああ、このフレーズは習ったことがある。そして習った時、すごく身につまされたんだった!
と相手の言っていることがわかってうれしくなりましたが、改めて意味を考えたら悲しくなりました。
get by =かろうじて〜できる
つまり、「ああ、君、かろうじて英語がわかるだけで、使えはしないんだね」という相手の方の失望が混じった言葉でした。
英国の語学学校でこのフレーズを習った時、「あなたの英語はfluent?それともget by?」というその教師のオリジナルの教材で説明されていました。
当然“fluent(流暢)”ではないので“get by”だと思う、と答えたところ、「get byはまあ、なんとかサバイブできるって意味だから。旅行するくらいならget byで十分よ」と励まされました。当時私は旅行ではなく、在住で、あわよくば現地で職も得ようとしていたので「それではダメなんだけどな」とガッカリしたのを覚えています。
ケンブリッジの辞書にはこういう例文で載っています。
How can he get by on so little money?
「そんな少ないお金でどうやっていくつもり?」ということです。この場合は、「かろうじてサバイブする」ことすら厳しい状態です。
We can get by with four computers at the moment, but we'll need a couple more when the new staff arrive.
「現時点では4台のコンピューターでなんとかなっているが、新しいスタッフが来たらあと2台は必要だ」
こちらもやはり「ギリギリでなんとかなっている」ということです。
そういえば、久しぶりの人に会った時、“How have you been doing?(どうしてた?)”と英語圏ではよく聞かれます。“How are you?”と聞かれた時と同様、なんとかの一つ覚えみたいに“good” か“fine”で返していました。けれど英語圏で生きている時は正直、英語が通じず職も見つからずギリギリの状態で生きていたため決して“fine”といえる状態ではなく、であればこう言えばよかったのです。
I’m just getting by.
(ギリギリだがなんとかやっている)
そういえば日本でも「あら、久しぶり? どうしてた?」という挨拶に対して「まぁなんとか生きてましたよ」と答える人は結構いると思います。この表現がまさにそれです。
get by は「すり抜ける」というような意味があるので、いろいろすり抜けてまぁギリギリやっていける、という意味合いの表現になったのだと思います。
もちろん本来の意味である「すり抜ける」でもこのように使えます。
道端で、人だかりがあって前に進めない時に、こう言うといいみたいです。
Can I get by?
この場合は「すり抜けていいですか?」つまり、「通してもらっていいですか」ということになります。人混みや道でこう言ったら「あ、ごめん」とみんな道をあけてくれるはずです。
とはいえ、英語の勉強もサボりがちの私は、もはやget byレベルの維持も難しい状態です。取材先のイギリス人の方のガッカリした表情を戒めに、2023年こそはもっと勉強したいと思います。
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連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。