35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第118回!
出世したければ、鼻をキレイにしておく
来月に昇進試験を控えているという、イギリス人の方がこう言いました。
Now, I’m keeping my nose clean.
日本語ペラペラですが、たまに母語である英語が出てくる人です。
“keep my nose clean.”つまり「鼻をキレイにしている」ということですから
「ああ、ロンドンの地下鉄って風が強いし埃も多いからね、鼻の中黒くなるよね」と言ったら笑われました。
Keep nose clean = トラブルに巻き込まれないよう大人しくしている
という意味だそうです。昇進試験までは余計なことに首をつっこまず、トラブルがないように大人しくしている、と言いたかったもようです。
他には、こんな文脈で使えるのだそうです。
If you kept your nose clean, you had a better job.
(もし、おとなしくしておいたら、もっといい仕事につけたのに)
語源には諸説ありますが、“keep hands clean”が、“nose”にかわったという説もあります。「手をキレイにしておく」だと日本語の「手を汚さずにいる」に近くてなんとなくイメージが湧きます。
また日本語では「余計なことに首をつっこむ」と「首」を使いますが、英語だと「鼻」なのかもしれません。ちなみに我が家の猫は、鉢植えや台所など、あらゆるところに鼻をつっこんでふんふんしているので、鼻先がいつも真っ黒です。「鼻をキレイにしておけ」が「大人しくしておけ」となるのは、猫のことを考えたら納得でした。
とはいえ、「大人しく鼻でもほじっていろ。何も余計なことはするな」という解釈もできるかもしれません。
あなたの上司の心臓は、ちゃんと“正しい位置”にある?
このように体の一部を使ったイディオムはたくさんあります。
イギリスの方は、ウィットに富んだ話し方をしますので、人の話をする際にも、わりと批判から入ることが多いです。昇進試験を控えた彼女も、上司のことを“Stingy(ケチ)”だとか、せこいだとか、散々悪口を言ってから、最後にこう言いました。
But his heart is in the right place.
直訳すると、「彼の心臓は正しい場所にあるけどね」。
ずっと悪口を言っていたのに、なぜか最後に心臓の位置を語った意味がわかりません。
Someone’s heart is in the right place=その人はいい人です
という意味なんだそうです。
心臓が正しい位置にある=悪い人ではない
というようなことで、文脈としては、悪口を言ったあとや、ネガティブな情報が多かった際に「でも、悪い人ではないんだ、いい人なんだ」とフォローする時の言い方だそうです。
なんだか無理矢理なフォローのようですが、確かに「あの上司すごいケチでさ、備品全然買ってくれないんだよね。ま、悪人ではないんだけどさ」というような会話は、かなりある気がします。基本的に悪口を言いたいのですが、さすがに誰が聞いているかわらかないので、1つフォローを入れておきたい、ということはしょっちゅうあります。なかなかいい表現を教えてもらいました。
「日本語ではなにか、体にまつわる面白いイディオムはある?」
と聞かれて、すぐに出てこず困ったのですが、数秒考えてこれが浮かびました。
「首を洗って待っていろ」
痛い目にあわせてやるから、覚悟しておけ、という意味なんだけど、刀で首を切るイメージかな。とお伝えしたところ。
“Oh! SAMURAI !?”
と大変驚いていました。
Illustration=Norio