HEALTH

2025.07.31

タンパク質、タウリン…三大夏風邪を予防する免疫力の高め方【専門医が伝授】

子供だけでなく大人にも流行している夏風邪。感染しないために今すぐ取り組みたいことを感染症に精通する、立川パークスクリニックの医院長・久住英二氏が伝授! 前編

夏風邪とは
Unsplash/Sander Sammy ※画像はイメージ

夏は睡眠時間が少なくなり、質も低下

主に夏に流行する、ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱という三大夏風邪。発熱にのどの痛み、腹痛や下痢、水疱性の発疹など厄介な症状に悩まされないためにも、まずは“かからない”ことが重要だ。

「三大夏風邪の主な感染経路は、原因となるウイルスがドアノブや電車の吊り革など人が触るところに付着し、そこに触れた手指を介して、飲食の際などに体内にウイルスが取り込まれるというもの。それを防ぐには、手を石鹸で念入りに洗うのが有効です。洗浄によってウイルスが死滅するわけではありませんが、皮脂ごとウイルスを洗い流せば、体内へのウイルスの侵入は防げます」

手洗いと共にカギとなるのが、免疫力の向上。そこで見直したいのが生活習慣だ。久住氏いわく、「三大夏風邪に限らず、睡眠不足、栄養の偏り、運動不足に陥っている人は感染症を発症しやすい」という。

「夏は睡眠不足になりがちな季節。諸説ありますが、寝室の気温が23℃を超えると睡眠の質が下がると言われていますし、朝日が昇る時間が早く、夜が短いことも影響しています。睡眠時間が減ったり質が下がったりすれば、身体はじゅうぶんな休息がとれず、体力低下や免疫力ダウンにつながりかねません。

私達の体は、眠りにつく時に体温を下げ、通常は3〜5時ころに最も体温が低くなります。その後朝に向かって体温を上げ、目覚めます。ですから、眠るときは暑く感じ、起きる頃には寒く感じるものなので、こうした体温変化がスムーズに行われるように室温を調整することも重要。就寝中エアコンをつけっぱなしにしている人が多いと思いますが、就寝から2時間ほどしたら室温を1〜2℃上げるようにセットするか、エアコンの『就寝モード』などを利用すると良いでしょう。寝具は、タオルケットのような薄手のものより夏用の掛け布団がおすすめです。

なお、アルコールは睡眠の質を低下させるので、寝酒は禁物。夕食の際にたしなむ程度に押さえてください。コーヒーや紅茶、ウーロン茶といったカフェイン類も、摂取するのは15時頃までが理想。また、就寝中ずっと消化活動を行っていると眠りが浅くなるので、夕食は寝る3時間前に済ませておきましょう。それより遅くなるなら、思い切って夕食抜きというのも手。朝はお腹が空いて、朝食をしっかり摂れますよ」

起床の際、朝日を浴びることで体内時計がリセットされるが、夏は日が昇るのが早過ぎるため、カーテンで陽射しが入る時間をコントロールするのがベター。窓の位置にもよるが、適度なタイミングで室内が明るくなるようにカーテンを少し開けておこう。ただし、遮光カーテンは光を完全にシャットダウンするので避けること。

タンパク質とタウリンの積極摂取が有効

夏風邪とは
Unsplash/Alex Knight ※画像はイメージ

暑さで食欲不振という人も目立つが、栄養バランスの良い食事も健康維持には欠かせない。中でも、必須なのがタンパク質だ。

「喜びや幸せ、やる気に関係する神経伝達物質、ド-パミンの原料になるのは、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種。タンパク質をしっかり摂ることが、元気に生き生きと日々を過ごすためには不可欠です。『食欲がないから、そうめんやお茶漬けで』という炭水化物中心の食事では、体力も免疫力も低下します。卵や肉、魚、大豆製品、乳製品などを毎食必ず摂るようにしてください」

成人男性に1日に必要なタンパク質の量は、体重1㎏あたり1g、運動量が多い人なら1.5gとされている。タンパク質の含有量は、肉類の場合100gに対して約20%、卵は1個につき約6g、木綿豆腐なら1丁で約7g程度と、思いのほか少ない。1食で必要量を摂取することは難しく、かつタンパク質は吸収が悪く、ドカ食いが効かないので、1日3食、毎食必ず摂るように心がけたい。

「暑い時期は、イカやタコ、ホタテといった魚介類に多く含まれるアミノ酸の一種、タウリンも意識して摂りたい栄養素のひとつ。特定の食材のみを食べ続けるのはほぼ不可能なので、食生活が人体に与える影響を検証するのは極めて難しいのですが、タウリンは細胞の浸透圧調整や自律神経の安定、抗酸化作用など多岐にわたる役割を担っており、免疫細胞が働くのにも関係しているとされています。タウリンの摂取によって、アスリートや自転車競技者の走行距離が延び、疲労が軽減したという研究結果も報告されていますし、昔からタコやイカが夏に好んで食べられてきたことを考えると、夏の疲労回復や体力維持、免疫力向上に役立つのは、間違いないと思います」

そのほか、抗酸化作用に優れたビタミンCや免疫細胞の調節に役立つビタミンD、代謝を促進し、疲労回復に役立つビタミンB群、免疫細胞を活性化させる亜鉛を含む食材や、腸内環境を整える食物繊維・乳酸菌・発酵食品なども、積極的に摂取したい。

“メタボ”が免疫力低下の元凶に

夏風邪とは
Unsplash/Towfiqu barbhuiya ※画像はイメージ

「免疫力を高めるには、運動習慣もマストです。とはいえ、ハードな運動は不要。夏は朝夕の涼しい時間帯に、早歩き程度のスピードで10分程度ジョギングするだけで構いません。

筋肉を鍛えると、気持ちが前向きになり、アンチエイジングにもつながるため、軽い筋トレもぜひ行いましょう。おすすめは、今日は腕立て、明日は腹筋、明後日はスクワットで1日休養をはさむというのを習慣にすること。これで、ほぼ全身の筋肉が鍛えられます。正しいフォームで、筋肉が刺激されていると実感できるようにややゆっくり、1日10回行えばOK。これなら1日2~3分でできますよ」

運動を習慣にすれば、筋肉がつき、体重も減少する。それも免疫力アップにつながるという。

「ここ数年、血糖値・コレステロール値・血圧が高い人は、過剰に蓄積した内臓脂肪が炎症を起こしており、それが血管を傷つけ、結果として心筋梗塞や脳梗塞が起き、また肥満関連がんを引き起こすことが分かってきました。さらに慢性炎症があると免疫がうまく働きません。つまり、メタボの人は、夏風邪にかかるリスクだけでなく、感染後は重症化しやすく治りにくい危険性もあるのです。

手洗い、睡眠、栄養、そして運動。日常生活を見直して、夏の暑さに負けることなく、元気に過ごしていただきたいですね」

久住英二氏
久住英二/Eiji Kusumi
内科医・血液専門医。1999年新潟大学医学部を卒業し、虎の門病院で内科研修を受け、2005年より同院で血液科医員を務める。2024 年立川パークスクリニック開業。専門は内科、血液内科、旅行医学。町医者として様々な病気の診療経験を有し、とくに感染症やワクチン、血液疾患に精通。わかりやすい解説が支持され、テレビやラジオ、雑誌などメディアでも活躍している。

TEXT=村上早苗

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