仕事に遊びに、人生をパワフルに生きるためにコンディショニングは必要不可欠。そのコンディショニングに重要な栄養素が「タンパク質」だ。タンパク質を十分に摂ることは、効率的に筋肉を増やすだけではなく、艶のある肌や髪、集中力の向上、快眠なども導いてくれる。あらゆるパフォーマンスを爆上げする、タンパク質の魔力。今回は、精神科医の和田秀樹さんにタンパク質の重要性について聞いた。【特集 タンパク質】
頭髪、肌、メンタル…タンパク質が影響する
人生100年時代を謳歌すべく、トレーニングに励み、日常生活を節制し、アンチエイジングにも積極的。なのに、パフォーマンスが期待するほど上がらない。その一因は、タンパク質不足にあり!
「江戸時代の肉食禁止といった歴史的背景もあって、日本人はタンパク質が不足しがち。実際、高齢者をはじめ、幅広い世代でタンパク質不足が指摘されていますが、これは由々しき問題。とくに30代以降は、タンパク質が足りているか否かで、若さと健康状態に大きな差が出ます」と、精神科医の和田秀樹さん。
タンパク質は、皮膚や髪、筋肉、骨、血管、臓器といった人体だけでなく、身体機能を調整するホルモンや酵素、神経伝達物資の材料でもあり、エネルギー源としても使用される。
「タンパク質が不足すれば、肌や髪が衰え、筋肉が落ち、内臓機能も低下し、免疫力も下がります。なかでもビジネスパーソンにとって厄介なのが、メンタルへの影響でしょう」
幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料は、トリプトファンという必須アミノ酸の一種。必須アミノ酸は体内ではつくれず食事で摂るしかないが、このトリプトファンの材料になるのがタンパク質なのだ。
「タンパク質不足でセロトニンの分泌が減少すると、気力が減退して気分が落ち込みがちに。うつ病にもなりかねません」
タンパク質には、肉や魚、卵、乳製品といった動物性タンパク質と、大豆やナッツなどの植物性タンパク質がある。動物性と植物性、どちらもバランスよく摂るのが理想だが、「肉は毎日食べてほしいですね。とくに40代以降は、積極的に摂るべき」と、和田先生。その理由は、肉はタンパク質だけでなく、ホルモンの原料となるコレステロールも豊富に含んでいるためだ。
「40代以降は、男性ホルモンが徐々に減少します。それなのに肉食を避けていては男性ホルモンの減少が加速し、男として枯れてしまいますよ。それは性欲だけに留まらず、意欲や記憶力の低下も招き、パフォーマンスもダウンしてしまいます。それにコレステロールは、免疫細胞の材料でもありますから、がん予防や健康維持の面でも不可欠です」
毎日必要量を摂取し、肉は朝・昼にガッツリと
タンパク質は、脂質と糖質とともに“三大栄養素”と呼ばれ、生きるのに必要なエネルギー源でもある。ただし、1日の必要量を超えて摂取した場合、脂質と糖質は体内で蓄えられるのに対し、タンパク質は貯蔵が不可能だ。
「脂質や糖質は、食事で必要な量を確保できなくても体内の貯蔵分で補えますが、タンパク質の場合、筋肉を分解して身体に不可欠なアミノ酸をつくることになってしまいます。つまり、タンパク質が慢性的に不足すると、筋肉がどんどん落ちてしまうということ。そうならないためにも、タンパク質は毎日必要な分を摂取することが大切です」
和田さんが推奨するのは、朝食と昼食でタンパク質をしっかり摂ること。なぜなら、栄養素の代謝に関係する肝臓は、夕方から夜にかけて働きが鈍るため、夕食で肉や魚をガッツリ摂っても、タンパク質の分解や代謝がうまくできないからだ。
タンパク質は、ビジネスパーソンの人生を左右する重要なカギ。食生活を見直して、味方につけたい。
この記事はGOETHE 2025年3月号「特集:なぜ、今ビジネスリーダーにタンパク質が必要なのか。」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら