賢者の知見を艶のスパイスに。投薬に頼らない医療先進国では既に普及している「予防医療」とは。【特集 男の美容最前線】
艶溢れる楽しい人生のために
トップアスリートやエグゼクティブが足繁く通うクリニックがある。場所は表参道、数々のアートが覗く入り口で出迎えてくれたのは、脳神経外科医として最前線で活躍する傍ら、「アフロードクリニック」の代表を務める道下将太郎氏。医療に止まらず、高齢者や障害者向けの旅行事業から街開発まで、多岐事業に携わる才気煥発(さいきかんぱつ)な32歳だ。病院としての機能だけでなく、生活と健康のプラットフォームとなる予防医療を掲げている同院。渡すのは人生を潤す“生活処方箋”。
「心身ともにウェルビーイングで幸福な状態が人間的な魅力につながると思うので、見た目とメンタル面の両立が大事だと感じています。そこに対するアプローチとして、美容医療だけではなく内面のコアとなる食事、運動、メンタルのマインドセットや思考法を処方しています」
診療は、明瞭な三軸の上に成り立っているという。
「1つめは、正しい情報を最新にアップデートし続けること。情報がなければ、薬に代わる選択肢を提案できないので。例えば、血圧の薬ひとつ処方するにしても、1年半かけて体重を8%落とすことで匹敵する効果が得られる。では、8%落とすにはどうすべきか。数値を見たほうが行動に移せるのか、グラフィックを見せながら疑問を深堀りしたほうが効果が出るのか。人によって受け取り方はさまざまなので、情報を整理したうえでカスタマイズして伝えることが2つめです。とはいえ、情報を得ても行動は簡単には変わらないもの。そこで、3つめがモチベーションを保たせること。これらが処方の基盤です」
薬以外の対処法にリーチすることで、単に健康上の数値が改善するだけではなくパフォーマンスレベルも格段に上がる。
「事業収益や家庭環境も相当変わります。トップの経営者やアスリートほど日中にかかる負荷が大きい。僕はそのハイレイヤーの方々のチューニングをしているイメージです」
予防医療を進める契機となったのはある想いからだという。
「一定数の手術ができるようになったところで見える景色は変わりませんでした。目の前の命を救うことも無論意義がありますが、数百万人を救うためには根底の医療や哲学的な座組みを変えなくてはと思ったんです」
人が亡くなるのを日々目にしてきた道下氏ゆえに、生死の課題を解決に導く“死のプロデュース”と題したプロジェクトも進めている。その一環にアートによる処方がある。
「生死に向き合う状況下では、言葉の本当に些細な部分が家族に一生残るんです。単語や行間、空気感、音、光の強さまでもが記憶に刻まれる究極のネゴシエーションにおいて、言葉の表現だけでは足りないなと感じることが多い。その代わりを成し得るのがアートだと。解釈に正解はないし見え方が日によって違うことが大事。作品を通して何かしらのプラスを、精神的に感じていただけたら」
すべては、人生をいきいきと生きるため。
「時間と資本の二軸に縛られた条件下で、幸福を築く解決策。それは本人が納得して生きているか。そのためにも“人間の中”を見に行く意味があると思う。毎回いつ終わるかわからない短距離レースで、それを納得しながら生きることが人生。瞬間最大風速を吹かせ続けることが艶にもつながる気がします」