年齢を重ねても衰えることのないパワフルな肢体としなやかな感性で、窪塚洋介の右に出る者はいない。すべては「腸活」にあるという、その秘訣をじっくりと聞いた。【特集 男の美容最前線】
簡単な“腸”習慣で心が整う
自らを窪塚“腸”介と名乗るほど、彼が「腸活」にハマったのは2020年のこと。折しもコロナ禍で世界中が停滞し、新しい日常の在り方を模索し始めた矢先。先輩から勧められた一冊の本を読んだことが大きなきっかけになったという。
「千葉で300年続く造り酒屋の先代当主である寺田啓佐さんが書かれた『発酵道―酒蔵の微生物が教えてくれた人間の生き方』という本ですが、その内容がすごく面白くて、腑に落ちるものだったんです。それ以来、日本古来から存在する微生物や発酵が人の免疫などに及ぼす力を意識するようになって。関連する本を読んだり、その道のスペシャリストにいろいろとお話をうかがっていくごとに、多様な菌が混在する腸内環境が体調を整えるだけでなく、性格や気分、運命にまで大いに関わっていることを知りました。肝となるのは『腸』の状態なのだと」
腸は宇宙だ――自身のYouTubeチャンネルなどで取材を重ねることで、その日の体調や性格以上のものまでをも司る腸の重要性を確信した瞬間のインパクトたるや。窪塚自身が大人になる過程で「これは信じて間違いない」と夢中になった音楽やストリートカルチャーを超えてきたというから、衝撃の大きさは並ではない。直感やインスピレーションを糧とするアーティストとして納得することも多々あったのだろう。窪塚は腸活の重要性について、こうも続ける。
「生物が単細胞から進化していく段階で、最初にできた器官が腸だといわれています。つまり人体のパーツでどれよりも先輩格なのが腸なわけです。その証拠に、腸がスッキリしたら脳も爽快になり、その逆も然り。生物にとって最重要な器官である脳と腸が双方向で互いに影響し合う『脳腸相関(のうちょうそうかん)』という言葉が昔からあるのも面白いですよね。確かに見方によっては似たような形状をしているし(笑)。
だから僕はむしろ直感的な判断を腸がしていて、脳はそれを補っているような気さえしています。人の性格が腸で決まるといわれているのも同様で、明るい人にはポジティブな菌がいて、ネガティブな人には悪玉菌がいるんだろうと。同じ釡の飯を食うということも微生物を共有することなので、家族や仲間の雰囲気が似てくるのもそういうことだと考えれば納得です」
腸は運命!
そんな窪塚は、自身の腸活のためにどんな健康法を日々実践しているのだろう。さぞや食事制限もストイックに我慢を重ねて……と思いきや、本人が語ってくれたのは誰でもその日からトライできる簡単な方法ばかり。
「最も取り組みやすく、自分自身が徹底しているのは、寝る前の3時間は食べないこと。そして朝食まで12時間は空けて、胃と腸を休ませるようにしています。そうするとまさに心身ともに熟睡できて、翌日は朝から元気いっぱいに楽しめて、豊かな生活を送れるようになります。そして、睡眠の次に大事にしているのは食事。腸内細菌が好む代表的な食材の頭文字をとった『ま(豆)ご(ゴマ)は(わかめ)や(野菜)さ(魚)し(椎茸)い(芋)な(納豆)』を積極的に摂るようにしています。
とはいっても、お酒も飲むし、ファストフードもたまに食べますよ(笑)。ストレスを感じないことが最も重要なので、人に『いいよ』『調子よくなるよ』と勧めることはあっても、強制したりコントロールすることは絶対にしません。要はプラスマイナスのバランスが取れていてハッピーであればいいことで、それは結果的に自身の肯定感にもつながる。いい腸活を実践していれば、メンタルにもかなりの効果があることもわかってきています」
生きていくうえでストレスは避けられないけれど、腸内環境を整え自分を肯定することで、ネガティブな感情をうまく押し流せたり、スルーできるようになると窪塚。ともすれば破天荒に見える言動やSNSでの発信が思いもかけずにバッシングされたりと、セレブリティならではの苦い思いを数多く経験してきたひとりだけに、その言葉には強い説得力がみなぎる。
「豊かで楽しい人生を送るためのニュートラルな身体をつくるライフハックは、すべて『腸』に帰結する気がしています。いい腸内環境を生みだす微生物は、AIや仮想通貨と並んで21世紀の重要なキーワードでもあります。最先端の技術とのコラボレーションで海洋汚染や土壌汚染などの環境問題なども解決に導いてくれるはずです」
腸を宇宙に例えた当初から、今ではそこに『腸は運命』という新たなワードが加わった。次男や三男がいてもみんなが「腸」男でいて、「腸」内会を作るのが夢だと、軽やかに笑う。