タイガー・ウッズも認めた、飛躍が期待されるルーキー、カール・ビリプスとは。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

プエルトリコに現れた新星はタイガーの後継者になれるか
ここ数年、PGAツアーでは大学を卒業したばかりの選手の活躍が続いているが、2025年もルーキーのカール・ビリプスが、PGAツアー昇格後3戦目(PGAツアー出場は4戦目)となるプエルトリコオープンで初優勝を果たした。
3日目で首位に立ち、最後は2位に3打差をつけて逃げ切るという、王者の貫録さえ感じるような勝利だった。
新たなフィールドですぐに結果を出し続けるビリプス
ビリプスはインドネシア生まれのオーストラリア国籍の選手だ。
6歳からゴルフを始め、全米キッズゴルフ世界選手権で7歳と9歳の部門で優勝し、ジュニア世界選手権では9~10歳と11~12歳の部でも優勝するなど、天才少年ぶりを発揮してきた。
11歳でアメリカに移住した後は、ゴルフアカデミーに通って熱心に技を磨き、2018年には夏季ユースオリンピックで金メダルを獲得するなど実績を積み重ねた。
その後、スタンフォード大学に進み、2024年はオールアメリカ・セカンドチームに選ばれるなど活躍。スタンフォード大学時代の平均スコアはタイガー・ウッズ(70.96)に次ぐ、歴代5位(71.04)を記録した。
大学生がPGAツアーや下部ツアーに出場できる制度「PGAツアー・ユニバーシティ」において、ビリプスはランキング10位となり、下部ツアーのコーンフェリーツアーの出場権を獲得。
大学卒業後、2024年7月からコーンフェリーツアーに参戦し、わずか4試合目のユタ選手権で優勝し、最終的に10試合の出場でポイントランキング19位となり、PGAツアー昇格の権利を獲得した。
さらに、この活躍が認められ、コーンフェリーツアーのルーキーオブザイヤーも受賞した。
CS放送のゴルフネットワークで、ビリプスが優勝したプエルトリコオープンの解説を務めたが、ビリプスは初日5位、2日目4位と、良い位置につけているものの序盤はそれほど目立っていなかった。
3日目に上位陣がスコアを崩すなか66を出して首位に立ち、最終日のフロントナインも終始落ちついたゴルフだったが、アイアンで2オン可能な難易度の低い11番パー5でバーディーが取れず、12番もボギーとしてピンチに陥ったかに見えた。
しかし、13番をバーディーとして流れを引き戻すと、そこから怒涛の3連続バーディーで勝負を決めた。
2025年8月に24歳になるという若さだが、まるで百戦錬磨のベテランのような落ち着いたプレーぶりに、新たなスターの出現を目の当たりにした気がした。
タイガーと接点が多いビリプス
ビリプスはタイガー・ウッズのアパレルブランド「Sun Day Red(サンデーレッド)」のアンバサダーに就任したが、このときにタイガーから「彼がPGAツアーで近い将来活躍するのは間違いない。未来のスター候補選手の1人だ」と最大級の賛辞を贈られていた。
この言葉は決してお世辞ではなかったということを、ビリプスは結果で証明してみせた。
実はビリプスは、タイガーとさまざまな縁がある選手だ。
ゴルフを始めた頃からタイガーに憧れ、スタンフォード大学を選んだのもタイガーの出身大学という理由からだという。
それに加え、タイガーのブランドのアンバサダーになり、「未来のスター候補」と太鼓判を押されたこともあり、今後の活躍次第ではタイガーの後継者と呼ばれてもおかしくはないだろう。
2024年のコーンフェリーツアーのスタッツを見てみると、平均飛距離3位の326.6ヤード、平均パット数も7位と、飛んでパットも入る攻撃的なゴルフが持ち味の選手といえるだろう。
プエルトリコオープンで見せたバーディーラッシュは、ビリプスの持ち味が存分に発揮されていたといえる。ビリプスはプエルトリコオープンに勝利したものの、この試合は昇格大会のアーノルド・パーマー招待の裏大会でトッププロは参加していない。
次はエリートフィールでとビッグネームたちと堂々と渡り合った末の優勝を見てみたい。
ただ、ビリプスには懸念もあり、2024年12月に椎間板ヘルニアによる腰痛を発症し、PGAツアー参戦は2025年2月末のメキシコ・オープンからになってしまった。まだ若いだけに故障にだけは気をつけて戦ってほしい。
プエルトリコオープンには、日本人選手も出場していたが、金谷拓実は通算13アンダー34位、星野陸也は8アンダーで64位だった。ツアー定着を目指して頑張ってほしい。
タイガーが実践する前傾角度キープドリル
ビリプスが憧れているタイガー・ウッズは、2025年3月11日(日本時間12日)にSNSで左アキレス腱の断裂で手術を受けたと発表した。今シーズンの復帰時期は不透明だが、またタイガーのプレーが見れる日を楽しみに復帰を待ちたい。
健康な時のタイガーは、ダウンスイングで腰を落とすシャドースイングを頻繁に行っていた。この練習は、アマチュアゴルファーがダウンスイングで伸び上がらずに、前傾角度を保つための練習として最適なので紹介したい。
ウッズの練習方法は、クラブを持たずにダウンスイングでスクワットをするように腰を深く落とす。このとき、ゆっくりと極端に大きく体を沈みこませることがポイントだ。実際のスイングでは大きく体を沈みこませることはできないが、この練習によってダウンスイングで体を沈みこませる感覚を身につけることができる。
このダウンスイングで地面を押す動きによって飛距離が伸びるだけではなく、前傾角度もキープすることが可能になるので、飛距離を伸ばしたい人や打点が不安定な人は試してみるといいだろう。
注意点として、膝を曲げて突き出したり、上半身だけを前に倒したりしないこと。おしりを突き出すように、骨盤を前傾させて沈みこみ、その動きに連動するように腕を下ろすようにしてほしい。
この練習を繰り返せば、ダウンスイングの途中で前傾角度が起き上がらず、しっかりインパクトでボールをとらえられるはずだ。どこでもできる練習なので、プレーのちょっとした合間に、体の動きを確認してみるのもいいだろう。
動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。