GOLF

2025.04.05

ゴルフトーナメント費用10億円も。なぜ、男子プロ下部ツアーを主催し続けるのか?

女子に比べて、人気低迷と言われ続ける男子ツアーだが、この数年は下部ツアー出身選手の活躍が著しい。人気復活の鍵は下部ツアーが握っているのではないだろうか。ゴルフジャーナリストが主催者のひとりに話を聞いた。【特集 GOLF:MORE THAN A GAME】

エリートグリップの開発拠点
大阪箕面市にあるエリートグリップの開発拠点。会議室や事務所だけでなくプロが練習できる施設から食事ができるフロアまで完備。この場所も選手ファーストの証。

下部ツアーが担う、日本のゴルフの未来

香妻陣一朗や久常涼、河本力ら下部ツアーで経験を積んだ選手たちがレギュラーツアーや海外で活躍する姿がこの数年目立つ。ただ、それとは反比例するかのように国内男子ツアーは以前よりも試合数が減るなど置かれている状況は厳しい。この状況を打開する策はあるのだろうか。話を聞いたのは2025年で14回目をむかえる大会「エリートグリップチャレンジ」を主催するゴルフグリップのメーカー、エリートグリップ代表取締役会長の軽部央氏だ。

――長く下部ツアーを支え続ける理由、今後の展望は?

軽部 人気がないって誰が言ってるんですかね。要は発信の仕方かなと。低迷していると言えば低迷になる。例えば人気がないと言われているラーメン屋には誰も行こうと思わないですよね。私は女子ツアーが特別人気があるとは思っていません。実際、会場に行けばギャラリーが多いんでしょうが、それは人気があると聞いた人たちが来ているだけ。だから男子ツアーも発信の仕方しだいで、人気があって行きたくなるラーメン屋になれると思っています。

――「エリートグリップチャレンジ」では、他の試合とは異なり、自社で試合映像を制作して放送されていますが、その狙いは発信力を上げるためですか?

軽部 2024年まで下部ツアーはABEMAさんが放送をしてくれていましたが、その前の下部ツアーは発信する術がない状態でした。それなら自分たちでやればということで機材などを揃えたのがはじまりです。本来であれば協会が試合映像を制作して、それをパッケージとしてスポンサーに営業できるのが理想だと思っています。

――とはいえ、放送するための機材はもちろんのこと、大会を主催するのにもお金がかかります。下部ツアーを長年にわたって主催する意図は?

軽部 これは企業理念にも関係していることで、事業を始めた時から機能性の高い商品をつくることにこだわってきました。ゴルフの世界で機能性を追求するならやはりトーナメントなんです。エリートグリップの製品は100%プロの意見のフィードバックでできています。売れるものをつくるのではなく、選手が試合で戦うグリップをつくることがポリシーです。

――試合会場が開発現場ということですね。そう考えるとレギュラーツアーを主催する選択肢もあるのでは? 

軽部 レギュラーツアーの選手は完成されているので、何かを変えたくないものなんです。でも下部の選手は上を目指そうとしている選手ばかり。もっといいプレイをするために何が必要かを常に考えている。そういう姿勢はものづくりにおいても大切なことで、ゴールをつくらないことは社のポリシーです。

――「エリートグリップチャレンジ」の歴代優勝者のひとり、香妻選手も海外で活躍していますが、そういう姿を見るのは嬉しいのでは?

軽部 それはありますね。我々はプロが持つポテンシャルを最大限引きだせるものをつくる。だから彼らが力を発揮できる場所、要は試合がもっと増えればいいと願っています。

――国内ではトーナメント開催に最大で10億円ほど必要と聞きますが、それが壁になっているのでしょうか?

軽部 企業としてトーナメントを遊びとして捉えると高いと思いますが、ビジネスが生まれる場として考えることができれば決して高くないと思います。

私たちエリートグリップは下部ツアーを含めてシニアなど、この14年で16大会を開催していますが、すべてが勉強になる場で、ビジネスチャンスだったと捉えています。振り返ればトーナメントを通じて会社の方向性や未来を変える出会いがあり、助言もたくさんもらいました。私個人としてはトーナメントに心から感謝しています。

今後もトーナメントを通じて出会いやビジネスの広がりを創造していきたい。トーナメントを通じて主催する側とゴルフ界が相互に成長することが一番大事だと思っています。

軽部央氏
軽部央/Nakaba Karube
エリートグリップ代表取締役会長。1971年生まれ。2009年にエリートグリップを設立。2011年から本格的にチャレンジトーナメントを開催。選手ファーストの理念を掲げ、機能を追求して品質の高いものづくりをポリシーにゴルフ界に新しい風を起こし続けている。

出島正登/Masato Ideshima
ゴルフジャーナリスト。1972年生まれ。ゴルフ研修生を経て専門誌の編集に携わる。現在はゴルフジャーナリストとしてさまざまな媒体で活動。2018年から下部ツアーに携わり、多くの選手の取材を行ってきた。ゴルフ歴は30年以上で、ベストスコアは70。

【特集 GOLF:MORE THAN A GAME】

この記事はGOETHE 2025年5月号「総力特集|GOLF:MORE THAN A GAME 単なるゲームを超えるゴルフ、60通りの誘惑」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=出島正登

PHOTOGRAPH=小林俊史

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