吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。今回はZOZOチャンピオンシップで印象的だった石川遼の、アマチュアも参考にしたいスイングに迫る。
日本人選手にとって飛躍のチャンスとなる、ZOZOチャンピオンシップ
PGAツアーのフェデックスカップ・フォールの第4戦ZOZOチャンピオンシップ(2023年10月19日~22日)が習志野カントリークラブで開催された。大会は最終日にコリン・モリカワがメジャー2勝の貫録を見せつけ、6打差の圧勝劇で幕を閉じた。
2023年から始まったフェデックスカップ・フォールは、レギュラーシーズンを終えた時点でフェデックスポイントランク51位以下の選手が来季の出場権を得るために125位内を目指す秋の7大会のこと。
それ以外にも、51~60位は格上げ大会2試合の出場権、51~70位は来季のフル出場権を獲得できるということもあり、ボーダーライン上の選手たちにとっては気の抜けない試合が続く。
ZOZOチャンピオンシップに出場する世界のトップ選手のうち、大会開幕前のワールドランキング20位以内の選手は、ザンダー・シャウフェレ(6位)、キーガン・ブラッドリー(16位)、コリン・モリカワ(20位)の3人と少し寂しいフィールドとなったが、彼らのようにランク上位の選手が来期に向けてフォールシリーズに出場するケースもある。
そうした位置づけのフェデックスカップ・フォールのなかでも、ZOZOチャンピオンシップは少し異質な面があり、日本人選手にとってアドバンテージがある大会となっている。
日本人選手にとっては、慣れ親しんだ高麗芝でプレーすることができ、コース距離も短いため国内ツアーのセッティングに近い。加えて海外の選手に比べて時差ボケなどの体調面の不安がなく、コンディションを整えやすい。
海外の選手たちは高麗芝のゴルフ場でプレーする機会が少ないため、ラフからフライヤーになるなど、芝の違いに苦しめられていた印象だった。なかには、前週の試合が終わった後に長時間フライトを経て、寝ずに練習ラウンドをこなした選手もいた。
出場選手は通常の試合よりも少ない78人で、そのうちの14人が日本人選手だったということもあり、日本人選手はいつもの試合に近い雰囲気を感じることもできただろう。
予選落ちがなく、全員が4日間プレーできるということも、日本人選手にとってはPGAツアーへの切符をつかみやすい大会と言っていい。
実際に石川遼や若手の久常涼、平田憲聖がトップ10に入り、次戦のPGAツアーの出場権を得るなど、日本人の活躍が目立った。
コンパクトなスイングの改造が成功しつつある石川遼
日本人選手のなかで最上位の4位となった石川遼にとっても、今大会は米ツアー復帰への足掛かりとなる収穫の多い大会となった。
石川は2013年から5年間、PGAツアーを主戦場としたが、思うような成績を残せず撤退した。その後、2020年からはスイングの改造に取り組み、筋力トレーニングで体も鍛え上げてきた。
スイングは以前よりトップがコンパクトになり、再現性が高まっているように見える。練習や試合を見る限り、取り組んでいるスイングが体に定着し、スイング改造が順調に進んでいるようだ。
スイングも良かったが、それ以上にパッティングを要所で決めていたのが印象的だった。
最終日は8位タイからのスタートだったが、前半は好調で一時は首位に2打差に迫るほどだった。しかし、後半では11番でボギー、12番でダブルボギーになるなど失速。このまま順位を落としていくのかと思われたところで、14番からの3連続バーディーで息を吹き返した。
特に15番は約5m、16番は約15mのロングパットを決め、単独2位を狙える位置までカムバックした。17番はボギーとしたものの、最終18番で3mのバーディーパットを決めて素晴らしいフィニッシュを見せた。
石川は今大会でトップ10に入り、次戦のPGAツアー「ワールドワイドテクノロジー選手権(メキシコ)」の出場権を得た。一度は断念したPGAツアー挑戦の足掛かりとして、上位に食い込んでもらいたいところだ。
その石川と同学年の松山英樹だが、今季は故障の影響もあり不本意なシーズンとなった。
ZOZOが2ヵ月ぶりの実戦ということで、試合勘が戻らなかったのか51位という結果に終わった。コンディションを整えて、来季は再び活躍する姿をファンに見せてくれるよう期待したい。
コンパクトなスイングのポイントは踏み込みのタイミング
石川遼のようなコンパクトなトップを身につけたい人に参考になるポイントを紹介したい。
コンパクトなトップを作るためには、体と腕のシンクロと、ダウンスイングで左足を踏み込むタイミングの2点が重要になる。
体と腕のシンクロとは、両肘と胸の3点の空間がスイング中に変わらずに体の回転で腕をコントロールすることだ。腕でクラブを振ってしまう「手打ちスイング」ではコンパクトなトップをつくることはできない。
そして、ダウンスイングで左足の踏み込むタイミングを早めることも重要だ。
具体的には、バックスイングで左腕が地面と平行になるあたりで、左足を踏み込んでダウンスイングを開始する。このとき、上半身はまだバックスイングを上げている途中なので、左足の踏み込みによって上半身と下半身が逆方向に動き、適切な順番でダウンスイングの動作を行うことができる。
アマチュアゴルファーの場合、トップをコンパクトにすると飛距離が出なくなるケースがあるが、左足を踏み込むタイミングを適切にすれば、飛距離の出るコンパクトトップにすることが可能だ。
オーバースイングになり、球筋が安定しないと悩んでいる人はコンパクトなトップを試してみてほしい。
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吉田洋一郎/HIROICHIRO YOSHIDA
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。