ゲーテは、ここ2年の間に新たに誕生したオフィスを取材。そこから見えてきたのは、最先端のオフィスは単に生産性が高いだけではない。ここに来れば仲間に会え、アイデアが生まれ、クリエイティブな働き方ができる場所であるということ。それは、行かなければいけないではなく、行きたくなるワークプレイスだ。
街とつながる、オフィスからはじまる、社員と地域の想像と創造
京成電鉄千葉線のみどり台駅から、千葉大学の西千葉キャンパスに向かう学園通りを進むと、自然なカーブを描く吊り屋根と周囲の緑になじむ木の建築が現れる。創業以来、千葉に根ざしてきたZOZOが海浜幕張から本社を移転。今年2月に移動を開始した話題の社屋は、第一に社員同士、第二に社員と街がつながる新たな拠点だ。

天井からも光も差しこむ吊り屋根は、ZOZOTOWNの主軸であるファッションから着想した布のドレープを、細い杉木で編まれた格子の壁面は繊維を表現。
ファッション通販サイトZOZO TOWNは、「想像(SOZO)と創造(SOZO)の行き交う街」、ふたつの"ZO"をかけ合わせた由来を持つが、ZOZOにはいつかインターネット上だけでなく、リアルなZOZOのオフィスから自分たちの想いを発信していきたいという構想があった。

ホテルのロビーのような雰囲気。壁一面の本棚にはファッション・アート・デザインを題材とした洋書が並ぶ。本棚の前の大きなテーブルの椅子は、すべてジャン・プルーヴェのスタンダードチェア。
ありきたりのオフィスビルではなく、理想の立地はZOZO TOWNのユーザー同様、幅広い世代の人々が暮らす住宅街。2019年には、千葉市および千葉大学と包括的連携協定を締結した。

地下には大、小さまざまな大きさの会議室が並ぶ。
これまでZOZOの物件のいくつかを設計してきたNAP建築設計事務所を率いる中村拓志氏と竹中工務店が手がけた建築も、同社の姿勢を体現。街に向かって懐を開くように設けられた大きな窓の執務スペースは、本社屋前の街路と同じ目線の高さになるようにつくられ、通りを行き交う人々を眺めることで、多くの人を笑顔にするアイデアが生まれるようにとの想いが込められている。

ZOZO TOWNの配送ボックスを模したモニュメント。
同時に社員同士が垣根のないコミュニケーションをとれるよう、その大空間は柱もできるだけなくした。食堂も設けず、かわりに地域の飲食店を利用することで、街との会話から生まれる自由な思考を絶やしたくないとする。

レセプションから見ることができる2階の一角には、アートや家具を並べる。
一方でコミュニケーションだけでなくインスピレーションも誘発するオフィスでありたいと、日本の若手作家を中心に、約80点のアート作品を設置。美大の学生によるものやコミッションワークも含め、部署を超えて有志のアート好きが選んだ作品は、敢えてキャプションボードをつけないことで、社員に自分の感性で好きな作品に出会ってほしいとの想いも込められている。

「NO WAR」と1文字ずつ黒のスプレーで描かれた5枚のTシャツ。これは企業理念である「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」を表現すべく、2007年に東証マザーズに上場した際のセレモニーで、当時の取締役5名が着用したもの。
コロナ禍の現在は、社員は原則リモートワーク。だが、収束後は新しいサービスを生みだすのに不可欠な対面でのコミュニケーションも取り入れるため、週2出社・週3リモートワークというハイブリッド型の新しい働き方への移行も宣言。

執務室には、集中して作業に向かいたい時に使用できるスペースもある。
西千葉に根を張ったZOZOが築いていく、言わば"街とつながるオフィス"。その想像と創造は無限だ。

執務室は2階・1階・半地下とすべてステップでつながっており、半地下には寛げるソファ席などを設置。
COMPANY
ゾゾ
EMPLOYEES
1,297名(グループ全体、2021年3月末日時点)
OFFICE SPACE
3フロア、1,983㎡
KICK OFF
2021年2月
1998年に設立(当時はスタートトゥデイ)。ZOZOTOWNをはじめ、テクノロジーを駆使したサービスを多数展開する。新本社は働き方の変化により、オフィススペースが縮小となった。