2024年のルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したニック・ダンラップ。PGAツアーの歴史を塗り替えたダンラップのように安定したパッティングをマスターする方法を紹介する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。
年間2勝のダンラップが新人賞を獲得
ゴルフを観戦していてシビれるのが、彗星のごとく現れた無名の新人が劇的な勝利を手にする瞬間だ。
その選手が人生を劇的に変える瞬間を目の当たりにし、見ている観客も自分のことのようにうれしくなり、興奮するものだ。
最も活躍したPGAツアーの新人選手に送られるルーキー・オブ・ザ・イヤー。2024年はニック・ダンラップが選出された。
この賞はPGAツアー選手による投票によって決まるもので、他にノミネートされていた、マックス・グレイザーマン、ジェイク・ナップ、マチュー・パボンの3名をおさえて、57%の票を獲得したダンラップが受賞を決めた。
2024年12月23日に21歳になったばかりのニック・ダンラップ。
2023年末はまだアラバマ大学2年生の20歳のアマチュアゴルファーだった。2021年の全米ジュニアと2023年の全米アマを制し、タイガー・ウッズに続く史上2人目のアマ2冠を達成するなど、将来のスター候補として知られていた。
2024年1月に行われたザ・アメリカンエキスプレスにおいて、1991年のフィル・ミケルソン以来33年ぶりにPGAツアーでアマチュアとして優勝。4日後にプロ転向を表明し、その後ダンラップは1月に続いて、7月のバラクーダ選手権も制して今季2勝を挙げた。
プレーオフシリーズは最終戦に進出できる30位の枠を逃したものの、第2戦のBMW選手権までコマを進め、2025年シーズンのシード権とシグネチャーイベントの出場権を獲得した。
ただ、勝った2試合は比較的トップレベルの選手の数が少ない大会だったことに加え、今季はメジャーやプレーヤーズ選手権などビッグネームが出場するフィールドではすべて予選落ちだった。
2025年シーズンにさらなる成長を見せてトップクラスの選手と互角の戦いをみせるのか、厚い壁に跳ね返されてしまうのか、戦いぶりを楽しみにしたい。
学生ゴルファーの活躍は続くか?
ダンラップのように大学生ながら、PGAツアーで活躍選手が増えている。
2024年7月にはフロリダ大学の学生ゴルファー、21歳のルーク・クラントンがロケットモーゲージクラシックで10位タイとなり、翌週のジョンディアクラシックでは優勝争いに加わり、惜しくも2位タイとなった。
アマチュアが2試合連続でベスト10に入ったのは、1958年のビリー・ジョー・パットン以来66年ぶり。タイガー・ウッズでさえできなかった快挙だ。
その後もフェデックスカップ・フォール最終戦のザ・RSMクラシックで1打差の2位タイに入るなど、8試合出場して7試合で予選通過し、ベスト10を4回記録するという好成績を残した。
ダンラップのようにPGAツアーでアマチュアとして活躍してプロ転向するルート以外にも、大学ランキング1位の選手にはPGAツアーのシード権が与えられる「PGAツアーユニバーシティ」制度を用意するなど、PGAツアーは若い選手にチャンスを与えている。
さまざまなルートからダンラップに続く若手選手が現れることだろう。
クロスハンドで安定したパッティング
ダンラップはパッティングを得意としているが、パッティンググリップはクロスハンドを採用している。
クロスハンドグリップは、右利きであれば左手が下で右手が上になる逆手の握り方だ。このグリップにすることで、利き手の右手が使いにくくなるので、右手の動きを抑えて体の動きでストロークをコントロールすることができる。
クロスハンドグリップのポイントは、左サイドをパターと一体化するように握り、体と腕のシンクロを高めることだ。これにより上半身の回転と腕の動きを連動させやすくなり、ストロークの再現性が高まる。
右手は軽く添える程度にして、右サイドを使いすぎないように意識してほしい。
クロスハンドグリップは、右手の動きを抑えることが第一の目的だが、ほかにもメリットがある。
左手を下にすることで左肩が下がるため、両肩の高さを地面と水平に保ちやすい。それによって目線が変わるため、右肩が下がって右を向いていた人は目標に対してスクエアに目線をセットしやすくなる利点がある。
パッティングが手打ちになって安定しない人は、一度ダンラップのようにクロスハンドグリップを試してみてほしい。パッティングの再現性が高まり、精度も高まることだろう。
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◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。