2024年活躍したプロのひとり、ザンダー・シャウフェレ。2023年秋から、タイガー・ウッズやブライソン・デシャンボーらを指導してきたクリス・コモに師事する。今回はシャウフェレのスイング改造について紹介する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。
メジャー2勝の好調だったシーズン
PGAツアーはレギュラーシーズンが終わり、現在は来シーズンのシード争いを中心としたフェデックスカップ・フォールが開催されている。
2024年10月24日から27日までの4日間、アコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブで開催されているZOZOチャンピオンシップ。
8戦あるフェデックスカップ・フォールの5戦目ということもあり、125位以内を目指すシード権争いはもちろん、2025年のシグネチャーイベント2試合の出場権が得られるザ・ネクスト10入りも激しい争いだ。
それに加えて、世界ランキング2位のザンダー・シャウフェレ、4位のコリン・モリカワ、7位の松山英樹などビッグネームも参戦して盛り上がりを見せている。
2024年、最も活躍した選手といえば、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーだろう。
マスターズでの勝利に続いて、パリ五輪では金メダルを獲得。プレーオフ最終戦のツアー選手権を制して年間王者にも輝いた。
その次に名前を挙げるとすれば、ザンダー・シャウフェレだろう。
2024年は全米プロゴルフ選手権で優勝してメジャー初制覇を果たすと、全英オープンも制してメジャー2勝目を挙げた。
シャウフェレは東京五輪で金メダルを獲得したこともあり日本でも知名度が高く、ZOZOチャンピオンシップでも多くのファンが注目しているだろう。シャウフェレのゆったりとしたスイングに憧れている人も多いのではないだろうか。
2023年秋からシャウフェレはクリス・コモからスイングの指導を受けている。
コモはタイガー・ウッズのコーチとして復活の基礎をつくり、ブライソン・デシャンボーのスイング改造に貢献して全米オープンのタイトルをもたらした。
コモと私はPGAツアー会場やコモが主催する勉強会などで親交を深め、現在は日本のゴルフ雑誌で連載をするなど頻繁にコミュニケーションをとっている。
PGAツアー会場でコモと話す機会があったのでシャウフェレのスイング改造について話を聞いてみた。
レイドオフをシャフトクロスに
コモに練習場でシャウフェレのスイングをどのように変えたのかを聞いたところ、複数の変更点を共有してくれた。今回は公表可能な範囲でシャウフェレのスイング改造について紹介したいと思う。
コモがスイング改造で取り組んだことの1つは、レイドオフだったトップポジションをシャフトクロスにしたことだ。
レイドオフというのは、トップ・オブ・スイングでクラブのシャフトの向きが飛球線に対してターゲットの左方向を指す状態のことをいう。
一般的にシャフトクロスよりもレイドオフになっているトップのほうがいいと思われており、アマチュアゴルファーのなかにもそのようなトップポジションにしようと練習している人も多いだろう。
体と腕のシンクロが崩れると、トップが大きくなり、シャフトクロスになりやすい傾向がある。
そのようなトップポジションだと、切り返しで手や腕でクラブを振り戻してスライスやプルフックになりやすいため、修正したほうがいいと言われることが多い。
シャウフェレの場合、左手の甲が手の平側に折れてフェースが閉じる「掌屈」の動きがあるため、レイドオフのトップにするとフェースを閉じるタイミングが早くなり、左に引っかかるボールが出てしまうことがあったという。
そのため、トップを大きくしてシャフトクロスの状態にすることで、クラブを戻すタイミングをとりやすくしているという。
また、そのようなトップにすることでダウンスイングのシャフトの傾きなどのクラブポジションが適切になり、安定したドローボールが打てるようになったとコモは話す。
実際にシャウフェレの練習を観察してみると、トップで静止してクラブポジションを確認する姿が何度も見られた。
スイングの傾向によって適切なクラブポジションは異なる。トップの位置だけを変えるのではなく、スイング全体の流れを考えてスイングを変えることが大切だ。
スイングを変えるときはスイングの見た目やパーツだけを変えるのではなく、スイング全体の流れを確認したうえで行ってみてほしい。
動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。