GOLF

2024.09.18

年間王者スコッティ・シェフラーのようなウィークグリップを好むゴルファーが注意すべきこと

2024年のPGAツアーのプレーオフは、スコッティ・シェフラーが初の年間王者のタイトルを獲得して幕を閉じた。今年のシェフラーの強さは際立っており、PGAツアー7勝に加え、パリ五輪で金メダルを獲得するなど、年間王者にふさわしい結果を残した。シェフラーは2年前のプレーオフでは最終日にロリー・マキロイに6打差を逆転されて2位となり、2023年もノルウェーの新鋭、ビクトル・ホブランにタイトルを譲り渡しただけに、ようやくつかんだ栄冠に喜びもひとしおだろう。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

過去2年間は無念の逆転負け

PGAツアーは8月初旬から始まるプレーオフ3戦で年間王者を決めている。最終戦となるツアー選手権は、プレーオフ第2戦のBMW選手権が終了した時点でのフェデックスカップ・ランキングに応じてスコアに差をつけてスタートし、優勝者がそのまま年間王者となる。

5年前からこの方式になったが、それ以前はツアー選手権優勝者と年間王者はそれぞれが大会の最後に表彰を受けていた。しかし、そのフォーマットでは試合内容によって優勝者が注目を集め過ぎてしまい、年間王者が霞んでしまうことがある。2018年大会では、奇跡の復活優勝を遂げたタイガー・ウッズばかりが注目を浴び、年間王者のジャスティン・ローズはすっかり陰の存在になってしまった。

そこで、最終戦の優勝者がそのまま年間チャンピオンになるという現在の方式になったのだが、シェフラーは2年連続で1位で最終戦を迎えながら年間王者を逃していたため、現行スタイルには少し不満を持っていたようだ。1年間の積み重ねがたった1試合でひっくり返されてしまったような気分になるのかもしれない。

今年のシェフラーのように、7勝を挙げたうえに五輪まで制した選手が年間王者を逃したらPGAツアーもフォーマットを考え直さざるを得なかったかもしれない。終わってみればシェフラーの順当な勝利となったが、本人にとってはアドバンテージがある分、勝って当然のプレッシャーが負担になっていたかもしれない。

「順当に勝つ」ことの難しさ

プレーオフに入ってからのシェフラーはパリ五輪の激闘の疲れからか、決して万全とはいえなかった。松山英樹が優勝したプレーオフ初戦は4位だったものの、優勝争いに絡んだとは言い難い4日間だった。そして、2戦目のBMW選手権は今シーズン3度目のトップ10圏外となる33位となり、一抹の不安がある中での最終戦だった。

最終戦をフェデックスカップポイントランキング1位で迎えたシェフラーは、10アンダーのアドバンテージを持ってスタートした。初日は6アンダーをマークし、アドバンテージがなくてもトップのスコアだった。その後も着実にスコアを重ねてトータル30アンダーとし、2位のコリン・モリカワに4打差をつけて年間王者の称号を手にした。

今シーズンのシェフラーのスタッツを見ると、平均ストロークとパーオン率、平均バーディー数、パーブレイク率で1位となり、出場20試合中トップ10が17試合と高いレベルで安定していたことかがわかる。

今シーズンはザンダー・シャウフェレやマキロイ、松山ら5人が2勝を挙げたが、シェフラーの7勝とは大きく離れており、シェフラーの独壇場だったことがわかる。また、勝利した試合はいずれもビッグトーナメントで、パリ五輪、メジャートーナメントのマスターズ、第五のメジャーと呼ばれるプレーヤーズ選手権、8試合ある高額賞金のシグネチャーイベントのうち半分の4試合に勝利し、最終戦のツアー選手権も制した。重要な試合でしっかりと結果を残した文句なしのシーズンといえるだろう。

私生活においては、2024年5月に長男が生まれて父親になったことも良い影響を与えたかもしれない。来年もシェフラーがそのまま王者として君臨し続けるのか、その座を脅かす選手が現れるのか来シーズンが楽しみだ。

ウィークグリップが特徴

シェフラーのスイングは他の選手と比べて独特だ。ウィークグリップでクラブを握り、トップの位置でフェースがやや開き、ダウンスイングでは開いたフェースを閉じながらインパクトを迎える。インパクトからフォロースルーにかけて右足を後ろに引くのも独特の動きだ。

最近のクラブは重心距離が長く、フェース面の開閉が少ない打ち方が合っているため、プロゴルファーの間でもフックグリップでフェースを閉じてスイングする傾向がある。シェフラーのスイングは、最近のスイング理論とは一線を画したオールドスタイルのスイングと言っていいだろう。

シェフラーのようなフェースの開閉が多いスイングで重要なのは、クラブをリリースするタイミングだ。クラブを早めにリリースしてダウンスイングからインパクトにかけてクラブフェースを閉じていかなければならない。

ウィークグリップのほうが握りやすいという人やスイング中にフェースが開きがちな人は、次のようなドリルに取り組んでみてほしい。

両手を少し離してクラブを握り、左腕が地面と平行になった高さから、クラブが地面と平行になる高さまでクラブを振り下ろす。このとき、右腰あたりでシャフトがしなるように意識をしながら行ってほしい。シャフトをしならせるためには、手首のコックを緩めてクラブを早めにリリースしなければならない。早めにクラブをリリースすればインパクトに向かってヘッドが走り、フェースがスクエアに戻りやすくなる。トップから手だけで下ろすアーリーリリースとは異なり、下半身の動きとリリースを連動させることに気をつけてほしい。

ウィークグリップでスイングが安定しないという人はこの練習ドリルを試してみるといいだろう。

動画解説はコチラ

吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=AP/アフロ

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