吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。今回は若手注目株のサヒス・ティーガラも実践するフェードボール。
来季の活躍が楽しみなティーガラとアバーグ
PGAツアーで今シーズンから始まったフェデックスカップ・フォールは、最終戦のザ・RSMクラシックで全日程を終え、2023年フェデックスカップポイントランキングの順位が確定した。
フェデックスカップ・フォールでは、ポイントランクをいかに上げていくかが焦点となる。
8月末に終了したプレーオフが終わった時点で来シーズンのシード権が確定しているのは上位50位の選手まで。この50人の選手は来期のPGAツアーの全試合に出場できるが、他の選手はフェデックスカップ・フォール終了時の順位で来期の出場権が決まる。
具体的に説明すると、来期にフルシード権が付与されるのは125位までの選手で、126位から150位までの選手は「準シード権」と呼ばれる限定的な出場権利を得られる。
また、51位から60位までは「ネクスト10」と呼ばれ、来期開幕後の高額賞金大会2試合への出場権が与えられるため、上位の選手は10名の枠を目指して戦うことになる。
シード権獲得を目指してフォールシリーズを戦っていた小平智は153位で終戦を迎え、残念ながら準シードに届かなった。
6戦目のバターフィールド・バミューダ選手権では2日目を終えた段階でトップと2打差の2位と健闘。しかし、決勝ラウンドでスコアを伸ばせず13位タイとなりチャンスをものにできなかった。
ZOZOチャンピオンシップやバミューダ選手権のような短いコースでは得意のショットで良いスコアを出すなど、シード権獲得のチャンスがあっただけに残念な結果となった。
小平はコーンフェリーツアーファイナルに出場し、上位5位タイまでに与えられるPGAツアー出場権を目指すことになったが、残念ながら1打及ばずに6位でのフィニッシュとなった。40位以内に与えられる下部ツアーの限定的な出場権は得ることができたため、来シーズンは出場権を持つDPワールドツアーと日程を調整しながらの試合出場となりそうだ。
フェデックスカップ・フォールの7試合を振り返ると、若手の活躍に加え、ベテランや中堅の復活が印象的なシリーズだった。
若手で躍進したのは、サヒス・ティーガラ(25歳)とルドビグ・アバーグ(24歳)の2人だ。
ティーガラはフォールシリーズ初戦のフォーティネット選手権、アバーグは最終戦のザ・RSMクラシックでPGAツアー初勝利を飾った。
2人とも大学時代にその年の優秀な学生ゴルファーに贈られるベン・ホーガン賞、ジャック・ニクラウス賞、ハスキンズ賞の3賞をそれぞれ2020年(ティーガラ)と2022年(アバーグ)に独占するなど、大学時代から活躍したエリート中のエリートだ。
特にアバーグはPGAツアーユニバーシティーランキング1位の資格でPGAツアーの今シーズンと24年シーズンのフルシード権を獲得し、ライダーカップの欧州選抜チームに抜擢されるなど、すでに将来を見込まれていたが、2024年はPGAツアーの中心選手になっていくに違いない。
アバーグのように、大学の上位選手がPGAツアーや下部ツアーのコーンフェリーツアーに入るシステムにより、PGAツアーの新陳代謝は勢いを増している。最近は日本のプロゴルフツアーでも学生の活躍が目立つが、アマチュアがすぐにプロとして活躍する流れは今後も加速して行くだろう。
愛娘の死を乗り越えたビジェガスの復活
ベテラン勢の活躍でいえば、かつてグリーンでラインを読む際のスパイダーポーズで一世を風靡したカミロ・ビジェガスが印象に残った。
コロンビア出身のビジェガスは、フロリダ大学から2004年にプロ転向。2年後にPGAツアーに参戦し、2008年にはプレーオフのBMW選手権で初優勝した。その勢いで、最終戦のザ・ツアー選手権を制してトップ選手の仲間入りも果たしている。
その後も順調にキャリアを重ねていたが、2014年のウィンダム選手権で4勝目を挙げた後は成績が低迷。2020年2月には生まれたばかりの長女ミアさんの病気がわかり、練習もままならない日々を送った。彼女は脳と脊椎に腫瘍があり、病気発覚から5ヵ月後に2歳の誕生日を迎えることなく、この世を去った。
その後、ビジェガスは2021年から本格的にツアーに復帰したが、成績は低迷したままだった。しかし、ようやくフェデックスカップ・フォール5戦目のワールドワイドテクノロジー選手権で久しぶりに優勝争いに加わって2位タイとなり、その勢いで6戦目のバミューダ選手権で9年ぶりの優勝を手にした。
5戦目を迎えるまでのポイントランクは223位だったが、今回の優勝によってシード権を獲得して大きくキャリアを好転させた。勝利を決めた瞬間。ビジェガスが天国にいる娘に想いを届けようと空を見上げたシーンが感動的だった。
私はビジェガスが優勝したバミューダ選手権の予選ラウンドをCS放送のゴルフネットワークで解説していたが、ビジェガスはショットが乱れてフェアウェイバンカーに入れても、そこからナイスリカバリーをしてピンにつけたり、長いパットを沈めたりと、勝負強さが目に付いた。
スイングについては、新しいコーチと苦労しながら取り組んでいる様子がうかがえ、ドライバーでは極端にヒール側にボールをセットしたり、アウトサイドインで素振りをするなど振り遅れのミスが出ないように気をつけていた。
新しいスイングをどれだけ自分のものにできるかが、来期に向けての課題となるだろう。
ティーガラの武器、フェードボールは体の回転がポイント
若手注目株のティーガラの武器はフェードボールだ。ストレートにボールを打ち出し、若干右に曲がりながら落ちていく球筋は狙った場所に正確にボールを止めたいプレーヤーに向いている。
フェードボールを打つには、体の回転が重要だ。体を先行させてクラブを少し遅らせることで、インパクトのクラブフェースの向きを適切にすることができる。
ティーガラのようなきれいなフェードボールを打ちたいという人のために、彼が取り入れている練習法を紹介しよう。
今回紹介するのは特に難しいドリルではなく、右腰の高さくらいまでクラブを上げ、そこから腰の回転を先行させながらインパクトまで振るシンプルなシャドースイングだ。
この練習では、インパクトのポジションでおへそは目標方向を向き、手元は若干ハンドファーストの状態になる。常に体の回転を先行させ、クラブはその動きに連動して少し遅れるイメージをもってほしい。体の向きやクラブの位置、フェースの向きを確認しながら、インパクトまでのシャドースイングを繰り返すといいだろう。
こうして、シャドースイングで体が先行するイメージを確認したら、次はハーフスイングでボールを打ってみよう。ボールを打つ際のポイントは、フェースを返したりヘッドを先行させたりしないことだ。体の回転が止まってしまうと、クラブが先行してボールが左に曲がってしまうので、常に体を回転させてフェースを閉じないようにしてほしい。
ダウンスイングで体の回転を先行させるスイングを身に付け、フィーガラのような力強いフェードボールを目指してほしい。
動画解説はコチラ
吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。