GOLF

2024.08.01

全米に続き、全英オープンも制覇!アマが取り入れたい、シャウフェレの”テンポとリズム”

2024年5月の全米プロゴルフ選手権で初メジャー制覇を果たしたばかりのザンダー・シャウフェレが、今度はロイヤルトゥルーン・ゴルフクラブで行われた全英オープンでファンを魅了した。前回の全米プロゴルフでは初日からトップを走り続ける完全優勝。今回は最終日での見事な逆転劇だった。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

吉田洋一郎コーチの最新ゴルフレッスン番外編/2024年の全英オープンを制したザンダー・シャウフェレ

目まぐるしい混戦を冷静沈着なプレーで制す

今回の全英オープンは目まぐるしく順位が変わる展開だった。

予選の2日間、大会を引っ張ったのはアイルランド出身のシェーン・ローリーのほか、イングランド出身のダニエル・ブラウンとジャスティン・ローズ。英国勢を中心とした展開に、地元のファンも大いに盛り上がっていた。

しかし、激しい風雨にさらされた3日目を終えて、トップに立ったのは米国のビリー・ホーシェル。1打差の2位にザンダー・シャウフェレやジャスティン・ローズら6人がひしめく大混戦となった。

シャウフェレが最終日に同組になったのはローズ。

ローズはパー3の8番でバーディーを決めて首位に並び、優勝に一歩近づいたかに見えたが、シャウフェレは後半バーディーラッシュで猛追した。

13番でこの日4つ目のバーディーを取ると、単独首位に立ち、さらにパー3の14番でバーディーパットを決めて2位に2打差をつけた。混戦の中、何よりも目立ったのは冷静に淡々とプレーを続ける姿だった。

天候に恵まれないなかでの混戦という、自分の力ではどうにもならない運が結果を左右しかねない展開のなか、プロであってもバーディーを決めれば派手なガッツポーズで自分を鼓舞したくなる。

しかし、シャウフェレは一喜一憂せずに目の前のプレーに集中し続けた。その姿はメンタルをコントロールする者だけが勝利を手にできると確信しているかのようだった。

シャウフェレがこれだけ自信をもってプレーできるのは、2023年11月からタイガー・ウッズの前コーチであるクリス・コモのもとで進めてきたスイング改造の成果だろう。

トップの手の位置が変わり、肩の回転がフラットになったことで手の詰まりが改善された。これによって、以前より飛距離が大きく伸びたことが落ち着いてプレーできる余裕にもつながっているのだろう。

2021年東京五輪の金メダリストが、パリオリンピックに向けて大きな勝利を挙げた。一流の技術と強いメンタルを手にしたシャウフェレの快進撃は、これからもしばらく続く気がする。

多くの罠が潜むリンクス中のリンクス

今回の全英が混戦になった要因はコースにもあるだろう。舞台は「リンクスの中のリンクス」と言われる難関コース、ロイヤルトゥルーン・ゴルフクラブだ。

私も2016年の全英オープンの取材でこのコースを訪れたが、この大会は同組のスウェーデン出身のヘンリック・ステンソンとフィル・ミケルソンによるメジャー史上屈指の名勝負として多くの人の記憶に残っている。

リンクスとは、もともとスコットランドの海岸近くに作られ、自然の地形を生かしたゴルフ場のことだ。

そもそも、ゴルフはスコットランド発祥で、リンクスもゴルフ場を指す言葉だ。つまり、リンクスこそゴルフ本来のプレーを楽しめるコースだと言っていいだろう。

ロイヤルトゥルーンのシグネチャーホールは8番のパー3、通称「ポステージスタンプ(郵便切手)」だ。

123ヤードと距離は短いが、縦長の小さなグリーン形状で周りに5つのバンカーがあり、落としどころは限られる。しかも時折、海からの強い逆風が吹くため、風にボールが押し戻されて難易度の高いバンカーに落ちてしまい、大たたきをしてしまう選手も珍しくない。

コース全体を見ても、ティーショットやセカンドショットで落下地点が見えないことが多く、風が強いなかでどこに打てばいいのか不安になる。

また、リンクスの特徴として地面が硬く、慣れていないとアプローチでどのように打ったらよいのか迷ってしまうため、コース攻略には経験も必要だ。

今大会も強い風に悩まされ、80台、90台を打って予選落ちしたり下位に沈んだりする選手が多かったなか、最終日に65で回り逆転勝利を果たしたシャウフェレは見事だったと言うしかない。

テンポとリズムを重視しバランスの良いスイングを

シャウフェレのスイングは滑らかな動きが特徴だ。これはテンポとリズムを重視し、良いバランスのスイングを心掛けているからだという。

リズムを取りながらスイングをするには、「イチ、ニ、サン」のリズムで体を動かすと良い。「イチ」で右足を踏み込んでスイングを始動したら、「ニ」で左足を踏み込み、「サン」でインパクトをむかえる。

右足を踏み込みながらバックスイングを始動し、左足を踏み込んで切り返し動作を行う。「ニ」でしっかり左足を踏み込むことが重要で、練習するときは左足を目標方向に踏み出すことを意識してもいい。

スイングのリズムがバラバラで安定しないと感じたら、下半身のリズムを確認してみてほしい。シャウフェレのようなスムーズな動きができるようになるはずだ。

動画解説はコチラ

吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=AP/アフロ

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