今回はゴルフのスコアメイクに欠かせないライン出しショットを紹介する。
参考にすべき、アクシェイ・バティアのライン出しショット
現在、PGAツアーで期待の若手として注目を浴びている選手の1人に、アクシェイ・バティアがいる。高校卒業後に大学を経ずにプロ転向し、2024年5年目を迎える22歳のレフティー選手だ。
2023年のバラクーダ選手権で初優勝し、2024年も4月のバレロテキサスオープンで優勝して2勝目を挙げた。いずれもプレーオフで勝利しており、勝負強い選手として記憶に残っている人がいるかもしれない。
私はゴルフ専門チャンネルの解説で初優勝したバラクーダ選手権の解説を担当したが、非常に良いアイアンショットを打っていた。
コンパクトな振り幅のスイングでしっかりグリーンにボールを乗せ、バーディーを量産していたことが印象に残っている。
コンパクトな振り幅で方向性を重視したショットのことを「ライン出しショット」と呼び、主にグリーンを狙うアイアンショットで使う機会がある。
このライン出しショットは、レベルアップを目指す中級者はマスターしておきたいスキルだ。
ライン出しショットが打てるようになると、通常のショットよりも方向性が安定し、打球が曲がりにくくなるため、パーオン率がアップしてスコアにも反映されやすくなる。
ライン出しショットの力感は7割くらいに抑え、コンパクトなトップからフィニッシュは振り切らずにおさめるのが特徴だ。
7割くらいの力感で小さな振り幅で打つショットというと簡単だと思いがちだが、基本に忠実なスイングを身につけていないとうまく打つことができない。
スイングの基本ができていないとライン出しショットを上手く打つことができず、かえってミスにつながることがあるので気をつけてほしい。
体と腕のシンクロと下半身主導がマスターの鍵
今回はライン出しショットをマスターするためのポイントを解説しよう。
ライン出しショットをうまく打つには、体と腕の同調性や下半身リードなど、スイングの基本を身につける必要がある。
今回はこの2つの基本動作を身につける前に、ライン出しショットを打つ上で避けたいNG動作を紹介するので、当てはまる人は改善するようにしてほしい。
1つ目は腕の使い過ぎだ。スイング中の腕は体とシンクロさせて能動的に腕を振らないようにすることが基本だが、ライン出しショットで腕を振って運動量が多くなると大きなミスにつながりやすい。
特にインパクトエリアで腕を振る傾向がある人は、フォロースルーをコンパクトにしようとするとミスが起きやすい。今まで腕を振ってスイングをしていたため、腕を止めることで振り遅れが出てボールがつかまらなくなる可能性があるのだ。
また、振り遅れを解消しようとして、急激にクラブを走らせることで左にボールが曲がってしまうこともある。ライン出しショットをマスターするためには、腕を振るタイミングに頼るのではなく、体と腕のシンクロを崩さずにして再現性の高い動きをマスターすることが肝心だ。
もう1つのNG動作は上半身先行の切り返しだ。ライン出しに限らず、フルスイングでも上半身から切り返すことで、スイング軌道が不安定になり、打点が安定しなくなる。
ライン出しショットでは振り幅が小さいため、フルスイングのようにスイング軌道を修正するタイミングがないこともあり、大きなミスにつながりやすい。
バティアはインパクトのときにおへそが目標方向を向くほど下半身を先行させている。これは、下半身で切り返し、胴体、腕、クラブの順でインパクトを迎えているためだ。
適切な順番で体を動かす「運動連鎖」によって下半身先行の切り返しとなり、小さい振り幅でも飛距離をそれほど落とさずショットを打つことができる。能動的に腕を振るスイングでは、腕の振り幅が小さくなると極端に飛距離が落ちることがあるので気をつけたい。
体と腕をシンクロさせることと下半身を先行させることはスイングの基本だが、ライン出しショットでは高いレベルでこれらの基本動作が求められるのだ。
グリーンを狙うショットでライン出しショットを打てれば、バーディーチャンスが増え、スコアは格段によくなるはずだ。ぜひ、スイングの基本動作を練習で磨き、ライン出しショットをマスターしてほしい。
動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。