前人未到の6連勝、ネリー・コルダの脱力スイングを解説。連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】。
飛距離&安定性UP! ネリー・コルダの脱力スイング
現役のプロゴルファーのなかで、最も良いスイングをする選手は誰かと尋ねられたら、迷わず女子ゴルフ世界ランキング1位のネリー・コルダの名前を挙げる。
今シーズンは出場5試合連続優勝を果たすなど絶好調で、米国女子ゴルフツアーの賞金ランキングを独走している。
歴代の米国女子ツアー選手を振り返ってみても、トップクラスの強さと言っていいだろう。
コルダは2024年5月19日が最終日だった「みずほアメリカズ・オープン」(リバティーナショナルGC ・ニュージャージー州)でも優勝し、今シーズン6勝目を挙げた。
前週に6連勝を逃し、勢いはいったん止まったかと思ったが、オーストラリアのハンナ・グリーンとの優勝争いを1打差で制した。
この試合でコルダは本来の調子とは言い難く、初日は17位スタート。最終日も前半9ホールで3ボギーを叩いた。それでも優勝してしまうところが今の彼女の強さだろう。
これで今シーズンは8戦で6勝となり、今シーズンは何勝するのか目が離せない。2024年5月30日にランカスター・カントリー・クラブで開幕した全米女子オープンでの優勝も十分に期待できる。
コルダのスイングの優れている点は、スイング中に力みのないところだ。
なめらかで力が全く入っていないように見えるが、適切なタイミングで出力をして、しっかりクラブを振り切ってボールをとらえている。
男子選手ではローリー・マキロイのスイングが美しいと言われるが、脱力感という点で言えば、コルダのスイングのほうが上だ。
アマチュアゴルファーにとって、コルダのように脱力したスイングは憧れだろう。
しかし、インパクトの瞬間に力を入れないとボールが飛ばないように感じるかもしれない。だが、脱力したスイングができるようになれば、スイングの再現性が高まり、ボールを遠くに飛ばせるようになる。
下半身主導と同調性、リリースのタイミングがポイント
今回は、コルダのスイングを参考に、スイング中に力を抜くためのポイントについて解説しよう。
コルダのような脱力したスイングを身に付けるうえで重要なポイントが3つある。1つ目は運動連鎖、2つ目は腕と体のシンクロ、3つ目はクラブのリリースだ。
スイング中に下半身から動き始め、胴体、腕、クラブといった適切な順で動作を行うことを運動連鎖と呼ぶ。コルダはスイング中の運動連鎖が適切なため、動きがスムーズに見える。
コルダの切り返しのタイミングは他の選手よりもワンテンポ早く、スムーズに下半身による切り返し動作を行っている。
意図的に踏み込み動作を行っていることがわかる選手もいるが、彼女の場合は切り返し動きがスムーズなため、踏み込まずに一連の動きで切り返しているように見える。
2つ目のポイントである体と腕のシンクロの定義は、アドレスでできた胸と両肘の空間をスイング中に変えないことだ。
体と腕がシンクロすることで、体の動きで腕をコントロールすることができる。体の中心部分を使ってスイングをすることで、手や腕などの末端部分を使う必要がなくなるため、脱力しているように見えるのだ。
実際にスイング中に意図的に腕を振る必要がなくなるので、力を入れなくてもスイングする感覚が理解できるようになるだろう。
3つ目のポイントであるクラブのリリースだが、コルダのフォロースルーを見てみると、グリップエンドが目標の反対側を向いている。目標方向にクラブを放り投げるようにリリースすると、このようなフォロースルーになる。
ダウンスイング後半でクラブをリリースすることで、クラブの遠心力を利用してスイングをすることができるため、脱力しているように見える。
このようなスイングができれば自動的にスイング軌道が定まり、クラブをボールに当てようとする必要がないため、手や腕に余計な力が入らない。
ボールを強く打とうと手や腕に力が入るほど、スイング軌道が狂い、スイングスピードも遅くなるので注意が必要だ。
ほぼ完成されたと言っても過言ではないコルダのスイングは、何度見ても飽きない。ぜひ、コルダのスイングから多くのことを学んでほしい。
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■連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは
世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子によるゴルフレッスン。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。