GOLF

2023.01.31

シニアツアーで花を咲かせたアルカーの、アマチュアにも効果的なスイング論とは

米シニアツアー、PGAツアーチャンピオンズの2023年シーズン初戦、三菱電機選手権(1月20日~22日)が米国ハワイ州フアラライGCで行われた。今年の開幕戦はスティーブ・ストリッカーが2日目に12バーディー、ノーボギーの60を記録するなど他の選手を圧倒。最終日は2位に6打差をつけて逃げ切った。今回は、最終3日目にストリッカーを上回る63で回り、2位タイにまで追い上げたスティーブン・アルカーに注目したい。

シニアツアーで花を咲かせたアルカー

【再現性の高いスイングを武器にシニアで活躍】

アルカーとストリッカーは同じ米シニアツアーの土俵で戦っているが、そこに至るまでの経歴は対照的だ。ストリッカーは1996年にPGAツアー2勝を挙げたのを皮切りに、2012年までに通算12勝を挙げ活躍した。2021年9月に地元のウィスコンシン州で開催されたライダーカップでは、キャプテンとして米国チームをまとめて勝利に導いた。シニア入りした後は12勝(メジャー4勝)を挙げて活躍を続けている。

これに対し、ニュージーランド出身のアルカーは、シニア入りする前は全くと言っていいほど無名だった。PGAツアーの出場権が得られず、下部ツアーのコーンフェリー・ツアーでプレーする時期が長く続いた。2010年にはPGAツアーに参戦するも、21試合すべてに予選落ちをするなど、PGAツアーで結果を残すことができなかった。ストリッカーがエリート選手だとすれば、アルカーは下積みの長い苦労人だと言っていいだろう。

しかし、50歳を迎えてシニア入りしたアルカーは、2021年シーズン後半にマンデートーナメントから勝ち上がり、トップ10入りを重ねて出場機会を得ると、プレーオフシリーズのティンバーテック選手権で初勝利を挙げる。2022年シーズンに入ると正確なショットを武器に4勝を挙げ、見事年間王者に輝いた。更に昨季選手の投票によって選ばれる「チャンピオンズプレーヤー・オブ・ザ・イヤー」に選出され一流選手の仲間入りを果たした。

昨季4勝を挙げたのは、アルカーのほか、ストリッカーと昨季の最優秀ルーキー、パドレイグ・ハリントンのみだ。今シーズンもこの3人が中心となって年間チャンピオンを争い、ツアーを大いに盛り上げてくれるに違いない。

私はゴルフ専門チャンネルの解説で、アルカーのことを「スイングサイボーグ」や「スイングマシーン」などと紹介することがあるが、とにかくスイングの再現性が高く、確かなスイング理論をベースとした作り込まれたスイングであることがわかる。特にスイング中の体と腕のシンクロが素晴らしく、腕をほとんど使わずに体全体を使ってスイングしているため再現性が高い。アルカーのシンデレラストーリーは、完成されたスイングによって起こるべくして起きたのだ。アルカーのスイングはアマチュアにとって非常に参考になるので、是非スイングをチェックしてみてほしい。

【右手を押さえて片手でバックスイング】

アルカーのような再現性の高いスイングを構築するために重要となるのは、スイング中にアドレスで両肘と胸でできた空間を変えない「体と腕のシンクロ」だ。ゴルフスイングでは、体の動きによってスイングをコントロールすることが大事になるのだが、多くのアマチュアゴルファーは利き手を過度に使ってしまうことが多く、体と腕のシンクロが崩れやすい。

右サイドの使い過ぎを抑えて、体と腕のシンクロを高めるために有効なのが、利き手1本でクラブを振る練習法だ。片手打ちはよく知られた練習法なので、試してみたことがある人も多いと思うが、今回は右手を使い過ぎないように、左手で利き腕の右腕を押さえてクラブを振る練習を紹介したい。

まず、アドレスでは右わきを締めて右手一本でクラブを持ち、左手で右手首と肘の中間あたりをつかみ、右腕がそのまま動かないように押さえてスイングをする。右わきをしっかり締めるためにタオルやヘッドカバーなどをわきにはさんでもいいだろう。左手で右腕をつかむことで利き腕を動かせなくなり、手や腕でクラブを引き上げることができなくなる。その代わりに胸郭などの胴体部分を動かすことで、両肘と胸の空間が変わらない体と腕がシンクロした状態をキープできるようになる。加えて、下半身も連動させることでスムーズにスイングすることができる。バックスイングは右足を踏み込んで始動し、右股関節を切り上げるようにして体を回転させる。この体の回転に合わせて腕が上がっていくことで体と腕のシンクロをキープした状態でスイングをすることができる。

左手で右腕を押さえたままスイングすることに違和感がなくなれば、今度は両手でスイングしてみよう。右わきを締め、右腕を動かさない感覚を忘れずにバックスイングをする。今までより腕の運動量は減るため、トップ・オブ・スイングがコンパクトになったように感じると思う。今まで体と腕のシンクロが崩れ、オーバースイングになっていた人は窮屈に感じると思うが、徐々にこの感覚に慣れてほしい。

このように体と腕のシンクロを高める練習を行うことで、アルカーのような再現性の高いスイングに近づくことができる。右にも左にも曲がると悩んでいる人は、練習で取り組んでみてほしい。

【動画解説はこちら】

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TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=AP/アフロ

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