“先んずれば人を制す”は、仕事でも春服でも同じこと。例年に比べ今年は、春の訪れが早くなりそうだという。新作をくまなくチェックし、軽やかな季節を先取りしたい。人気スタイリスト・野口強による連載「The character of G」。

1.エルメス|表情が変わる洒脱な襟元で着こなしの喜びを再発見
ゆったりと過ごす夏の日の情景を、上質素材と卓越した仕立て、透明感のある色彩で洗練されたスタイルに構築した今春夏のエルメス。ヴォー・ヌバック・プリュムのレザーシャツは、同素材のスカーフカラーを好みのニュアンスで結ぶことで、襟元に動きを添える1着。今季の自由なフィーリングを体現する代表的なアイテムだ。

2.ロエベ|斬新なプロポーションが纏いの期待値を押し上げる
今季のロエベが掲げるのは“ラディカルな節度”。逆説的な意味を含むテーマでスタイリングされたテーラードジャケットとトラウザーズのルックは、スケールの探求による新たなシルエットが白眉。ツイストも効いている。

3.セリーヌ オム|麗しの英国趣味をクール&モダンにブラッシュアップ
1920年代のロンドンの若者を中心としたソーシャルサークルからインスピレーションを得たセリーヌ。トラッドなアイテムをメインに、手刺繍や上質な英国生地が、彩りと規律を添える。

4.プラダ|革新的な解釈で再構築されたリアルクローズの現在形
オーセンティックなメンズアイテムを、丈やボリューム、バランスやプロポーションを変化させることでフレッシュな表情に再構築したプラダの今シーズン。ヴィンテージ風のレザージャケットに合わせたツナギには、ファスナーで両袖を外せるギミックが忍ばせてある。

5.ヴァレンティノ|濃密な世界観を保ちながらメゾンのスピリットを継承
アレッサンドロ・ミケーレが手がけるヴァレンティノのメインコレクションが始動。濃密な世界観はファンならずとも必見。

6.ドリス ヴァン ノッテン|メンズウェアの地平を拓いた創造者の美しい余韻に浸る
創立デザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンのラストコレクションとなる今春夏。ゴールド刺繍やプレシャスストーンがちりばめられたブルゾンは、彼が歩んできた創造の一端を表しているかのような1着。これからのブランドの歩みにも、大いに期待したくなる。

7.バーバリー|エアリーな軽やかさが映えるイージー・エレガンスの粋
一重仕立てのシルクブルゾンと、センタークリースラインにファスナーを配したパンツは、クリーンでリラクシーなムード。春夏の新作は、老舗バーバリーのレガシーを巧みに再構築したアイテムが特に秀逸。ファスナーを開けてベンチレーションにするデザインもひときわ冴える。

8.ジュンヤ ワタナベ マン|さらなる深掘りから生まれたドレスアップデニム
今季のジュンヤ ワタナベ マンは今までにやり尽くされたテクニックから、さらに新たな発見を探求することで生まれたドレスアップスタイルが楽しい。パッチワークをあしらったディナージャケットや再構築したブリーチジーンズなどのアイテムが出色だ。
