スニーカー時代が到来してから、革靴への価値観も変化している昨今。そんななか、今もなお愛されている“色褪せない靴”は存在する。各店の目利きのバイヤーらが、それぞれベスト3を厳選しご紹介。今回は、阪急メンズ大阪店バイヤーのお薦めを紹介する。【特集 靴と鞄】

挑戦的な1足に惹かれる地域性が、個性的な上品靴の需要を高めている
地域によって好まれる革靴も変化する。それを如実に証明したのが、阪急メンズ大阪だ。有楽町にも居を構える同店は、関東と関西の趣味嗜好の違いを教えてくれた。メンズバイヤーの上戸氏によれば、紳士的なイギリス靴を好む関東に対し、関西はイタリア的。遊び心のある靴が好まれるのだとか。
「関西のお客様は上品な装いのなかに個性を出すスタイルを好む方が多いです。そのため、端正なルックスの王道よりも一風変わった癖のあるデザインを履く方が多いです。もちろんイギリス靴も人気ですが、今回ご紹介するコルテやサントーニがまさにそれです」
流行り廃り以上に大事なのはまずエレガンスであること
また、同店では今もなおレースアップモデルの需要が高い。
「昨今ではアンライニングやローファーのような、いわゆる紐なし靴が売れ行きを伸ばしていますが、弊社ではレースアップシューズ、なかでもシャープなトウの木型が好調です。
ただ、ラウンドトウの人気がないわけではありません。パラブーツのシャンボードも事実根強い人気を誇っていますから。こうしたあらゆるニーズに応えるべく、当店ではバリエーション豊かに取り揃えるようにしています。なので、英国靴も一定数売り上げを取れています。ただ、同等かそれ以上に、遊び心のあるシャープな靴が売れているんです。
とはいえ、あくまでひとクセの範囲です。奇を衒(てら)ったものではなく、いかに自身を個性的かつ上品に魅せられるかを重視しているお客様が多いです」
関西の人は蘊蓄(うんちく)や歴史的背景以上に、どう見えるか、どんなスタイルを楽しめるかを購入のポイントにしていると語る上戸氏。だからこそ、豊富なラインナップで届ける阪急メンズ大阪にファッション感度の高い人が集まるのだろう
1.コルテのアルカ
阪急メンズ大阪店のシューズ売り場の顔ともいえる、コルテの「アルカ」。甲から爪先にかけて傾斜のついたアッパーと、さらに角度のついたトウが、エッジの効いた独特の佇まいを構築。上質なカーフを使用した品のよさに遊び心を加えた雰囲気が、大人の余裕とこなれ感をもたらしてくれる。

2.サントーニのフラン 日本限定モデル
シャープなシルエットを形成したイタリアらしい佇まいの1足。マルケ州の夕日にインスパイアされたオレンジが実にエレガント。

3.パラブーツのシャンボード
1足あれば重宝すること間違いなしの名作は、耐久性&耐水性に優れたリスワクシーレザーを採用。油分の多い革ゆえに雨の日にも対応する。


上戸大夢
阪急メンズ大阪店 紳士靴&バッグ バイヤー兼PR。岡山県生まれ。シューズの販売からメンズファッションに携わり、阪急での勤続9年のバイヤー。靴以外にもバッグや洋服のバイイングを担当した経験から、メンズファッション全般の豊富な知識と感性を持つ。
この記事はGOETHE 2025年3月号「総力特集:自分らしくいる、靴と鞄」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら