スニーカー時代が到来してから、革靴への価値観も変化している昨今。そんななか、今もなお愛されている“色褪せない靴”は存在する。各店の目利きのバイヤーらが、それぞれベスト3を厳選しご紹介。今回は、伊勢丹 新宿店メンズ館バイヤーのお薦めを紹介する。【特集 靴と鞄】

スニーカー時代だからこそいい革靴を求める人が増えた
真に長く愛用できる1足=永久不変ではない。伊勢丹の紳士靴バイヤー鏡氏がそれを語ってくれた。百貨店における紳士靴売り場は、他社との比較ができるかどうかに重きを置いているのだそう。
「インショップはお客様のライフスタイルを包含しにいくものであるのに対し、編集ショップの役割は、お客様の足元に関わるシーンをよりよいものにすることです。つまり、靴の用途に合わせた提案ですね。同じ商品であっても売り方が違うんです」
そう語る鏡氏によれば、インショップとシューズ売り場では根本的な役割が異なるそう。「こうした靴が欲しい」、「自分に合ったストレートチップが欲しい」といったような、用途や履き比べを求める人には編集ショップが最適だと言う。
革靴の需要が減った結果革靴にかける思いが向上した
日本の靴の売り上げシェアは、約8割がスニーカーといわれるが、伊勢丹新宿店では約7割が革靴という逆転現象が起きているそう。つまり、伊勢丹新宿店に行けば必ずある、という普遍的革靴への信頼度の表れといえる。
「名作革靴も不変とはいっても流行の影響を受けるもので、昨年売れていたものが今年は売れないということも多い。そんななかでもイギリスの靴は、そこまで影響を受けにくいんです。それはマイナーチェンジをしているからこそ。顔となるベースデザインはそのままに、ラストや革、細部に変化を加えているんです。今回はそんな時代に合わせ進化している3足をピックアップしました。こうした進化が、10年20年と愛され続けているゆえんです」
伊勢丹新宿店では、革靴の需要が下がっている分、革靴への思い入れが向上しているそう。こうした世の情勢も伊勢丹新宿店で革靴のシェア率が高い理由なのかもしれない。
1.チャーチのピカデリー
色気あるスエードのピカデリーは、名作ラストといわれる73ラストを採用。その一方でソールには屈曲性に優れたグッドイヤーフレキシブルソールを配するという、名作と最新技術が融合したモデル。柔らかな仕立てがワンランク上の快適な履き心地を堪能できる。

2.クロケット アンド ジョーンズのキャベンディッシュ3
スーツと好相性なローファー。同ブランドの上級ラインであるハンドグレードスペックが魅力。

3.エドワード グリーンのピカデリー
ラスト184を採用したアンライニング仕様。ホーウィン社のコードバンを使用し、レザーソールで別注。


鏡陽介
伊勢丹 新宿店メンズ館 紳士靴バイヤー。東京都生まれ。三越伊勢丹での勤続23年という長きにわたりバイヤーを務め、その審美眼は折り紙つき。国内外の人気ブランドを中心に、ここでしか成せない別注がかなうのもその手腕があってこそ。
この記事はGOETHE 2025年3月号「総力特集:自分らしくいる、靴と鞄」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら