連載「I Don’t WEAR Jewelry. I WEAR Art」。 第31回は、伝統をモダンに昇華し続けるディオール。
新たな表現によって再認識する完成されたデザインコード
歴史あるメゾンには、時代やトレンドを超越するモチーフが存在し、脈々と引き継がれている。ディオールにおいては、「カナージュ」である。名作「レディ ディオール」をはじめ、主にバッグなどにあしらわれてきた「カナージュ」は“椅子の籐(とう)張り”を意味し、1947年のムッシュ ディオールによる初コレクションで使用した椅子に由来。この椅子はナポレオン3世様式と呼ばれるスタイルのものだ。
編みこまれた様子をジオメトリックなパターンとして再解釈したディオールの「カナージュ」は、ディオール ファイン ジュエリーのクリエイティブ ディレクターであるヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌにより、ファインジュエリーとして、新たに表現された。
緻密な籐とシンプルな鏡面が織りなす奥行きある佇まい
ディオールが初めてファインジュエリーをローンチさせたのは1998年。そして、2024年ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌが新コレクション「マイ ディオール」を発表した。
「カナージュ」をモチーフにしたジュエリーは、籐(とう)が複雑に編みこまれた様子を緻密に表現。伝統的なモチーフが規則的に連続することでグラフィカルな雰囲気を演出するだけでなく、下地に置かれた鏡面仕上げされたプレートがさらなる煌めきを加えてくれる。
また、バングルもリングもともに、横幅を持たせることで繊細ながらも絶妙な存在感を放ち、スタイリングのアクセントとしても最適だ。ほどよいボリューム感により、男女を問うことなく、ペアでも楽しむことができるコレクションとなっている。
■連載「I Don’t WEAR Jewelry. I WEAR Art」とは……
時にファッションとして、時にシンボルとして、またはアートに……。ジュエリーを身につける理由は、実にさまざまだ。だが、そのどれもがアイデンティティの表明であり、身につけた日々は、つまり人生の足跡。そんな価値あるジュエリーを紹介する。