連載「I Don’t WEAR Jewelry. I WEAR Art」。第26回は、名作の新たな魅力を創出した「カルティエ」。
シンプルにして大きな変化、名作ならではの奥深き世界
ジュエリーには、時代を超越した名作が数多く存在する。なかでも1847年にパリで創業し、1924年に「トリニティ」を生みだしたジュエラーであるカルティエは、その大家といえよう。3種のゴールドリングが絡み合う姿の「トリニティ」は、愛と多様性を象徴するコレクションだ。
2024年に100周年を迎え、クッションシェイプによって新たな魅力を考案し、ラウンドからスクエアへ姿を変えた。シンプルな変化だが、直線と丸みを帯びたコーナーの組み合わせからなる造形は、フォルムの美しさをいっそう引きだす。さすが時代を超越した名作、その奥深さに感嘆する。
クッションゆえの複雑性に愛の姿を見いだす
「トリニティ」はルイ・カルティエの類いまれなる想像力から誕生した。また、100年の歴史のなかでは多くの著名人にも愛され続け、ジャン・コクトーが愛する人を想いながら小指に重ねづけしていたとされるエピソードは、実にロマンチックでエモーショナル。
新たに誕生したクッションシェイプは、ネックレスやリングのみならず、ブレスレットにおいても採用される。それによって生まれた新鮮な絡み合いは、常に協調するだけではない愛の如く、時に整然と、時に歪なシルエットと、さまざまな顔を魅せる。愛と絆、多様性を表現するコレクションの神髄をより鮮明に描きだしたといえる。
■連載「I Don’t WEAR Jewelry. I WEAR Art」とは……
時にファッションとして、時にシンボルとして、またはアートに……。ジュエリーを身につける理由は、実にさまざまだ。だが、そのどれもがアイデンティティの表明であり、身につけた日々は、つまり人生の足跡。そんな価値あるジュエリーを紹介する。