今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、小曽根真 TriNFiNiTYの『For Someone』。

肉声のように歌うピアノ。楽器のようにも聴けるヴォーカル
一曲目「アントールド・ストーリーズ」のファーストタッチから、小曽根真のピアノの艶やかな音色を体験できる。
演奏はトリオ編成。そのTRiNFiNiTYのドラムスはきたいくにと、ベースは小川晋平。世界をステージにした活動が目立ってきた小曽根だが、このユニットのような日本の若い世代の腕利きたちとの音楽にも味わいがある。日本人の演奏だからこその、そこはかとない情緒や温かさが感じられるのだ。
人柄が生む音なのか。風土が生む音なのか。「ローリング・テイルズ」も「チェイシング・ザ・ホライゾン」も、音楽にやわらかく包みこまれる。アグレッシブに演奏する小曽根も魅力的だが、スロウテンポの音も沁みる。音符と音符の間の空白まで、音楽を感じさせてくれるからだ。
アルバムには女性ボーカリスト、アナ・マリア・ヨペックが4曲参加。水彩画を思わせる透き通るような声。小曽根のピアノが肉声に聴こえるように、アナ・マリアのボーカルは歌であるとともに楽器としても響く。ピアノが歌い、声が奏でる。このアルバムの魅力だろう。
2026年3月4、5日にブルーノート東京、9日にビルボードライブ大阪で公演を予定。生の『For Someone』も体験したい。

Makoto Ozone TriNFiNiTY『For Someone』
ユニバーサル ミュージック ¥3,520。
TRiNFiNiTYの2作目。ピアノの美しさを堪能できる。3月に東京と大阪で公演。東京公演の詳細はこちら 大阪公演の詳細はこちら
Kazunori Kodate
音楽ライター。近著は『不道徳ロック講座』(新潮新書)、『ジャズ・ジャイアントたちの20代録音「青の時代」を聴く』(星海社)。他に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)など多数。

