今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、藤井風の新作アルバム『Prema』。

新時代のポップスターとして世界の扉を開く意欲作
待望の新作だ。約3年ぶりとなる藤井風のアルバムはすべて英語詞の全9曲を収録した一枚。アメリカのリパブリック・レコードと契約しグローバルに活躍の場を広げる藤井の新たな挑戦を示す意欲作だ。前作『LOVE ALL SERVE ALL』後にリリースされた「満ちてゆく」や「花」などのシングル曲は本編に収録せず、オリジナルの新曲で構成した内容にもアーティストとしての強いこだわりを感じる。
楽曲の多くはLAで世界を代表するヒットメーカーたちとのコライトセッションで制作された。全曲のプロデュースはNewJeansのプロデューサーとしても知られる韓国のプロデューサー/DJの250(イオゴン)が担当。新たな出会いによって藤井のルーツにあるソウルやR&Bの要素がポップに磨き上げられているのを感じる。1980年代の音楽スタイルをモダンなセンスで昇華したサウンドがアルバム全体の特色となっている。
歌詞の世界観も印象的だ。アルバムのタイトル「Prema」はサンスクリット語で「愛」を意味する言葉。表題曲では情熱的なメロディに乗せて彼の信条をピュアに歌い上げる。ポップスターとしての破格な才能と共に真摯なメッセージ性を感じる一枚だ。
Tomonori Shiba
音楽ジャーナリスト。音楽やカルチャー分野を中心に幅広く記事執筆を手がける。著書に『ヒットの崩壊』『平成のヒット曲』などがある。