今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、Suchmosの『Sunburst』。

喪失を越えて唯一無二の美学を鳴らす
Suchmosが戻ってきた。「修行の時期を迎えるため」と2021年2月に活動休止を発表した後も人気は衰えず、先日、横浜アリーナで開催された復活ライブには約20万枚のチケット応募が殺到。待望の存在であることを改めて証明した。約6年ぶりの新作EP『Sunburst』には全4曲を収録。唯一無二の美学を持つバンドの音楽性の深化と成熟を感じさせる内容だ。
休止期間中にギターのTAIKINGはVaundyや藤井風など数々のアーティストのサポートを務めてきた。YONCEは5人組バンド・Hedigan’sでよりディープな音楽表現にトライしてきた。そうしたメンバーそれぞれの経験が新作に昇華している。
シティポップのソウルフルで洒脱なムードに満ちた「Whole of Flower」や、小気味よいギターサウンドが映えるファンクナンバー「Eye to Eye」などグルーヴィーな楽曲が耳を引く一方、「Marry」は、フォーキーな土臭さを感じさせるスローナンバーだ。「BOY」はおおらかで温かみのあるヴィンテージロック。骨太な演奏に強い説得力が宿る。
休止期間中には結成メンバーであるベースのHSUの死去もあった。喪失を乗り越え再び歩み始めたバンドの力強い現在地を感じさせる1枚だ。
Tomonori Shiba
音楽ジャーナリスト。音楽やカルチャー分野を中心に幅広く記事執筆を手がける。著書に『ヒットの崩壊』『平成のヒット曲』などがある。