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2024.09.20

滝藤賢一が大号泣した親子の物語『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。今回は、2024年9月20日公開の映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』を取り上げる。

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会

猛烈に感情移入して大号泣した親子の物語

2024年もいよいよ秋シーズンに突入。過ぎ去ったこの夏、世間はオリンピックで賑わい、代表選手を育てたご家族の感動秘話にも心を打たれました。華々しい場に送りだすまでにいろいろなことがあったと思いますが、子育ての参考として競技と同等に興味を持って見てしまいますよねえ。ドラマがあります。

子育て映画も同様、観ると猛烈に感情移入してしまうんです。今作の主役の吉沢亮くん、若かりし頃の自分と重なり、猛省しました。吉沢君演じる大は、聴覚障害者である両親のもとに産まれます。大は聴覚があり、以前、本連載で紹介したフランス映画『エール!』と、アメリカのリメイク版『コーダ あいのうた』の主人公と同じCODA(Children of Deaf Adults)です。

前者は、聞こえる子が聞こえない親を支える葛藤が描かれていましたが、今作は障害者、健常者という垣根がありません。親の聴覚障害が日常の一部として描かれ、どの家庭にでも起こりえる、子供の思春期、親の悩み、家族の幸せ。誰しもが通った親子の風景がメインに描かれている。

もちろん、聞こえないことで大変なことはたくさんあるが、そこがフィーチャーされているわけではない。だからか、客観的に物語を観て感動するというよりは、まるで主人公の人生を自分が生きているような錯覚に陥り、どのシーンも自分に置き換わってしまう。刺さり方がエグかったです。滝藤も努力しても変えようがないことで親を責め、後悔しながら謝らなかった過去……、あるなあ、山ほど……。 

また、両親役の忍足(おしだり)亜希子さんと今井彰人さんによる手話と表情の演技が素晴らしい。特に根拠もないのに「大は大丈夫だよ」と息子に信頼を寄せる今井さん演じる父に、私の亡き父を見て泣きました。

しかし、子供って、何であんなに母親にだけ当たりまくるんだろう。そして母は、何であんなにめちゃくちゃに罵られているのに、いつも子供のことを一番に考えているんだろう。まさに、“母の愛は海よりも深し”でした(泣)。

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

宮城県の小さな港町で、聴覚障害を持つ両親のもとで愛されて育った五十嵐大。年齢を重ねるうち、自分の家が他と違うことに苛立ちを覚えていく。母のことが大好きなのに、疎ましく思ってしまう心の軌跡を描いたヒューマンドラマ。

2024/日本
監督:呉美保
出演:吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人ほか
配給:ギャガ
2024年9月20日より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
https://gaga.ne.jp/FutatsunoSekai/

滝藤賢一/Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。NHKの連続テレビ小説『虎に翼』に主人公の上司役として出演している。2024年10月11日からは映画『若き見知らぬ者たち』が公開される。

COMPOSITION=金原由佳

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