アートやヒップホップに造形が深く、一方で経営者へのインタビューなど幅広い活動をするライター川岸徹は人生の「楽しみ上手」。海外ドラマや映画専任のライターではないからこそ、本能に従順に、真に心に響く、人生を潤す海外ドラマをセレクト! 2022年を力強く生きるための刺激をくれる2作品をお届けする。
多様性を認め合う時代にマーベル作品は欠かせない
洋画・海外ドラマファンにとって、「マーベル作品」は見逃せない大きなジャンルになりました。2019年公開の映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』は興行収入約28億ドルを記録し、『アバター』を抜いて映画史上1位を獲得(現在は再びアバターに抜かれ、首位争いを続けています)。このエンドゲーム後の物語は、「Disney+」のマーベルドラマシリーズに受け継がれ、次々に世界トップのヒットを記録しています。
世界中で愛されているマーベル作品。日本にも熱狂的なファンはいるものの、海外に比べると、いまいち時代の波に乗り切れていない気がします。
その理由は、日本では「ヒーローもの=こども向け」という意識が強いためだと感じます。マーベル作品はコミックを原作にしたヒーローもの。とはいっても、「仮面ライダー」「ウルトラマン」のような昔ながらの“勧善懲悪ヒーローもの”ではありません。ヒーローであっても善と悪の間で心は揺れ動くし、時には間違った判断をしてしまいます。ヴィラン(悪役)もヒーローと敵対するうちに心が通じ合い、ヒーローとして生きようと改心することもあります。マーベル作品は、ヒーローものという手法をとった人間ドラマ。「こどもやティーンエイジャー向けの内容だろう」と切り捨ててしまうのは、もったいないことです。
『ホークアイ』ついに完結
2021年は実写版ドラマ4作品がリリースされました。最新作は昨年12月22日に完結した『ホークアイ』です。
“弓の名手”ホークアイことクリント・バートンは、アベンジャーズの一員として活躍しました。現在は一線から退いて家族とともに幸せに暮らしています。でも、一度戦いの中に身を置いてしまうと、きれいさっぱり清算できるというわけにはいきません。過去の因縁の相手から命を狙われ、アベンジャーズの同僚だったブラック・ウィドウの妹エレーナ・ベロワからも姉の死の責任を問われてしまいます。
過去の重さに苦悩するクリント。でも、うれしい出会いもあります。学生時代に弓と武術のチャンピオンとして名を馳せた女性ケイト・ビショップと知り合い、徐々に心を通わせ、敵に立ち向かっていきます。
このケイト・ビショップを演じているのがヘイリー・スタインフェルド。そして、ブラック・ウィドウの妹エレーナ・ベロワをフローレンス・ピューが演じています。人気女優2人の共演がゾクゾクするほど凄い。2人が対峙するシーンの張りつめた緊張感は、この作品の大きな見せ場です。
新ストーリー続々! 『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』
その他お薦めの3作品は『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』。スカーレット・ウィッチ、ヴィジョン、ファルコン、ロキら、マーベルの主要キャラクターの新しいストーリーが描かれています。この3作品の中から好みで1作選ぶとしたら、『ロキ』。
トム・ヒドルストン演じるロキは、嘘やいたずらを愛する“邪神”。時空を歪めた罪によって、世界の時間軸を監視するTVAという組織に拘束されてしまいます。自分が狂わせた時間軸を元に戻すために時間修復の手伝いをするロキ。でも、その裏には巨大な陰謀が隠されています。
ストーリーは複雑ですが、少しずつ謎が明らかになっていく心地よさがあります。しかし、それも束の間。さらなる謎が現れて頭の中は再びカオス状態に。その終わらないスパイラルが、不思議と心地いいんです。楽しみを助長してくれるように、続編となるシーズン2の制作もアナウンスされました。
人間や神、異星人、無から生まれた生命体など、様々なキャラクターと各々の価値観が交差するマーベルの物語。壮大な世界観は、ダイバーシティの時代にふさわしいものだと感じます。
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第一回「女性の力強い生き様に共感。胸アツ、サクセスストーリー」はこちら。
第二回「刺激が欲しくなったら、『裏社会』を覗く社会派ドラマを」はこちら。