スーパーカーの聖地とされるイタリア・モデナに本拠を構えるパガーニは、美しい内外装の設えと圧倒的な高性能で世界のセレブを魅了する。ラグジュアリーで希少なだけでなく、世界で最も厳しいアメリカの安全/排出ガス規制をクリアするなど、その完成度は高い。その最新モデル「ウトピア・ロードスター」がベールを脱いだ。

クルマは紳士の遊び道具だった
スーパーカーを超える、ハイパーカーと呼ばれるカテゴリーで最も成功を収めているブランドのひとつがパガーニだろう。ランボルギーニで研鑽を積んだアルゼンチン人デザイナーのオラチオ・パガーニ氏が1992年に設立した比較的新しい自動車会社であるが、1台数億円のモデルは発表した途端に完売。納車を待つウェイティングリストには、錚々たるセレブリティたちが名を連ねている。
デザイン、エンジニアリング、マーケティングなどなど、パガーニが成功した理由はいくつか挙げることができる。ただし、そうした難しいことよりももっとシンプルに、クルマの原点に回帰したことが支持されている理由ではないだろうか。
クルマが実用の道具として進化したのは、第二次大戦以降だ。戦前のクルマの黎明期、この乗り物はやんごとなき身分の人々の遊び道具だった。
誰よりも速くて遠くまで行ける、俺だけの格好いいやつを造ってくれ――。
こうしたリクエストに応えてクルマは高性能化を果たし、ジェントルマンはレースに夢中になり、サーキットは紳士淑女の社交場となった。パガーニのクルマ造りは、こうした幸せな時代に立ち返っているように思えてならない。
2025年春に日本でお披露目されたパガーニの最新モデル「ウトピア・ロードスター」は、世界限定で130台、消費税や輸送費を除いた価格は312万ユーロ(1ユーロ=160円換算で4億9920万円)。ただし2024年夏に発表された時点ですべて買い手が決まっており、日本には4台がやってくる予定だという。
新作を披露するにあたってオラチオ氏が寄せたメッセージがこのブランドの本質を示している。曰く、「ハイブリッドではない12気筒エンジンを搭載しています」とのこと。クラシック音楽のオーケストラに電子楽器が入らないように、幸せだった時代のウトピア(理想郷)にモーターは不要なのだ。
PAGANI UTOPIA ROADSTER

サイズ:全長4673mm×全幅2060×全高1165mm
エンジン排気量:5980cc
エンジン形式:V型12気筒
最高出力:864hs/6000rpm
最大トルク:1100Nm/2800~5900rpm
乾燥重量:1280kg
価格:€3,120,000
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パガーニ・アウトモビリ https://www.sky-g.org/pagani/