フォルクスワーゲンのベストセラーモデル、ゴルフがデビューしたのは1974年のこと。そして、その翌年に追加されたのが、スポーツバージョンの「GTI」。誕生からおよそ半世紀、8世代目となった最新のゴルフ「GTI」を試してみた。

第8世代の改良版「8.5型」へとアップデート
2025年1月、新型になったVWゴルフの国内販売が開始された。VWはいま電気自動車の「ID.シリーズ」に注力しているが、内燃エンジンモデルの開発をやめたわけではない。特に大黒柱ともいえるゴルフのことだけに手抜かりはない。
この新型は2021年に発売された第8世代の改良版にあたるもので通称「8.5型」とも呼ばれている。近年は「電動化」「運転支援機能の強化」「デジタル化」が世界的なトレンドであり、自動車にもアップデートが求められる。この8.5型では新世代のインフォテインメントシステムや新しいデジタルライトなどを採用したことが注目のトピックだ。
エクステリアにおけるGTIとベースモデルとの識別点は、ハニカムグリルやフロントスポイラー、ディフューザー付きのリヤバンパーなど専用のパーツがある。そして新型ではドアパネルのサイドミラー下あたりにさりげなくGTIロゴが配されている。
また、最大500m前方を照射可能なメインビームを搭載するLEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」を採用。さらにグリル中央にあるVWロゴはLEDのイルミネーションとなっており、ライトの点灯とともに白く浮かび上がるように輝く。テールランプも3DデザインのLEDとなっている。
初代から受けつがれるチェック柄のシート
インテリアでは、赤をアクセントとしたチェック柄のファブリックシートを標準装備する。チェック柄は初代モデルから受け継がれているGTIの伝統のひとつ。当時はポルシェ911やメルセデス・ベンツのスポーツモデルもシートにチェック柄を採用しており、スポーティな印象を高める意匠として採用されているようだ。
それもあって、ドアを開くとGTIであるとひと目でわかる。深く腰かけると適度なホールド感があり、コンフォート性とスポーティさをバランスよく共存させている。もしファブリックでなく、レザーがお好みなら、オプションでスポーティなレザーシートも選択可能となっている。
新型の注目ポイントは、新世代のインフォテインメントシステム“MIB4”を搭載したこと。12.9インチの大型タッチディスプレイを採用し、ディスプレイ下部にはエアコンの温度設定や音量設定を行うバックライト付きタッチスライダーバーを設置。
ここは従来モデルで指摘されていた操作性が改善された。さらにシステム演算処理性能が高められ、地図スクロールなどのレスポンスも向上している。またメルセデス・ベンツをはじめ各社が取り入れている音声コントロール機能「IDA(アイダ)ボイスアシスタント」を搭載する。
「ハロー、アイダ」または「ハロー、フォルクスワーゲン」と声で呼びかけると起動し、オーディオやナビゲーション、エアコンなどの操作が可能となっている。
エンジンは改良で進化し続けている2リッター直列4気筒ターボ。最高出力は従来比20PSアップの265PS、最大トルクは従来と同じく370Nmを発揮する。トランスミッションは7速DSGだ。
エンジンは1600回転から最大トルクを発揮するため、とても扱いやすい。ゆっくりと動きだしても極めてスムーズに速度がのってくるし、もしアクセルペダルを強く踏み込んだならば意のままに加速する。DSGもギクシャクするような動きはなく、シームレスに変速していく。
まるで運転がうまくなったよう
今回の試乗車に装着されていて、ぜひおすすめしたいオプション装備がアダプティブシャシーコントロールの“DCC”。走行モードに応じてダンパーの減衰力を調整してくれるものだが、「コンフォート」を選べば超扁平タイヤを履いているとは思えないほど良好な乗り心地となり、「スポーツ」を選べば適度に引き締まり、コーナリング時にもアンダーステアを感じさせることなくグイグイ曲がっていく。まるで運転がうまくなったように感じるはずだ。
以前はGTIのことを少しやんちゃなイメージの“ホットハッチ”と形容することもあったが、半世紀の時間が洗練された大人のスポーツモデルへと磨きあげたようだ。
電動化が進むなかで一時は生産中止も噂されたゴルフだが、しっかりと進化を果たしていた。ただし、2027年からはゴルフをつくっているドイツの本社工場は電気自動車の生産ラインへと切り替わり、内燃エンジン仕様のゴルフの生産はメキシコへ移管される計画となっている。
ちなみにメキシコ生産といえばかつてのビートルなどもドイツから移管された歴史があり、現在では本社にも匹敵するクオリティを誇るという。ただ、それでもやっぱりドイツ製が欲しいという方は、急いだほうがいいかもしれない。